OVERFLOWとgadget
キヨが差し出した携帯の画像を一瞥する。朝、小麦が持ってたのと同じものだ。
「あぁ。俺だよ。生徒会長にまでそんな画像が回るとはね」
「今の姿とこの写真の姿、おまけに半年前までのリンの姿、ずいぶん違うようだが?」
「髪も目も気分が変われば色ぐらい変えんだろ。今の格好はただ理事長に言われてしてるだけだ」
「理事長に? カツラと眼鏡を着用するようにと言われたのか?」
「そうだよ。俺も理由は知らない。そうしろと言われたからしてる。それだけだ。他に質問は?」
用意していた言い訳をスラスラと口にし、それ以上言及されないように違う質問をするように促す。
これ以上この俺流ファッションをツッコむんじゃねーぞ。俺も理事長に言われたってので通るか不安なんだ。
「じゃあ最後に1つ。……なぜ俺がキヨだと分かった?」
「直感だよ、直感。なんか知んねぇけど、見た瞬間キヨだと思った。そんだけ」
「そうか」
「もう帰っていい? ハラ減ってんだよ」
そこでそれまで黙って話を聞いていた3番隊隊長が口を開いた。
「なぁ、さっきから気になってたんだけど、お前さぁ、キヨが桜井圭吾だって知ってんのにそのタメ口、勇気あるよなぁ」
相手は日本有数、日本一と言っても過言ではない財閥の御曹司。本来ならば話をできる人物ではない。ってか?
でもよ、レオンとして接している奴らに比べたら、たかが御曹司のひよっこがなんだって感じなんだよな。
「桜井圭吾だから何? キヨにはタメ口きいてきたのに、桜井の人間だからっていきなり態度変えたら変じゃね? ……あぁ、でも先輩なんだし敬語使うべきか……。すみません、会長。と……お2人のお名前を伺ってもよろしいですか?」
「僕は幸介だよっ! 幸ちゃんって呼んでねっ」
……うーん。……あの1番隊隊長が『幸ちゃん』って。やっぱ見習うべきだな。外見以外は別人だとしか思えない。素直に尊敬する。
「俺は銀次。なんとでも呼べよ。ついでに言っとくと俺に敬語はいらねーぞ?」
「ほんと? 分かった、楽でいーや」
終始キヨを威嚇し続けていたタロが口を挟む。
「おい、もう帰っていいんだろ」
「あぁ、突然呼び出して悪かった。帰っていい」
「リンのこと探ったり、これ以上関わろうとしたらそのすましたツラ……潰すからな」
「コラ。gadgetには手ぇ出すなって言ってんだろ。めんどくさいことになるの嫌だからな、俺は。ほら、帰るぞ」
「……はぁーい」
あんな100人以上いるチームと、たった18人のうちがやってすんなり勝てるわけがねぇ。まぁ、負けはしないけどな。
さてさて、お昼ごはんが俺を待っている! 待ってて俺のカスタードシュークリームちゃんっ!
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