リンとキヨ




SIDE:狼

「分かった、行ってくるわ」


 しぶしぶといった様子で教室の出入り口に向かう鈴音。


「俺も行く」

「あ? いーよ、1人で」

「行く」

「……じゃあ、行くか」


 キヨの所なんかに絶対1人で行かせない。あいつだけは鈴音に近づかせたくない。


SIDE:鈴音

 一般棟の5階にある生徒会室に、タロと2人で入る。5つの向かい合う形で置かれた作業机。その内の一番奥の机に座るキヨと、キヨの隣に立つ小さな少年、少し離れたところにあるソファに座る銀髪の少年の姿を認める。


「いきなり呼び出してすまないな。野田も一緒ということはやはり、リンなんだな? ……栗原鈴音君」

「あー、そちらさんもお揃いで。gadgetの1番隊と3番隊の隊長まで生徒会の役員とはね。驚きの余りキヨの名前を口にしちゃうなんて大失敗だったなぁ。まさか桜井のお坊ちゃまがキヨだなんて思わなくて」


 俺の言葉に驚いた様子の小さな少年、もとい1番隊隊長が口を開く。


「あっれぇ〜? 僕が1番隊隊長だってよく分かったねぇ?」

「少し髪色変えたくらい分かって当然。3番隊隊長の方はまんまだしね」


 変装のプロよ、俺は。
 でもそのブリった話し方を先に聞いてたら分かんなかったかもしれない。……ブリッコキャラ? そこまで自分を偽れるとはな……見習わないとな。

 ずっとキヨを睨みつけていたタロが言う。目がちょっと血走ってるし、下手するとこいつキレっかもしんない。


「で、リンに何の用なんだよ……?」

「そう興奮するな。いくつかリンに質問があるだけだ」


 きた。でも変装の理由は空牙のおかげで用意できてんだ。
 動揺を悟られないように、言葉を返す。


「なに?」

「なぜこの学園に来た?」


 ……けっこう核心に迫った質問だな。まぁ、かわすけどね。


「なぜってのは何? なんでこんな半端な時期に来たかってこと?」

「いや、なぜこの学園を選んだ?」


 チッ。余計に核心つかせちまった。
 さて、どうするか……。


「なんでそんなことをキヨに説明しなくちゃなんねぇんだ?」

「気になるんだ。突如として現れて、強者揃いのチームを作ったリンのことが。少数でありながら、うちと並ぶほどの強さと言われている。総長不在である今でもだ。……この学園に入ったのは、総長に復帰するためか?」

「違う。元々、俺は全寮制の高校を探してたんだ。ここにしたのは本当にたまたまピックアップした中で学力的に見合うと思ったから選んだだけの話だ。変な慣習を知った今じゃ、少し後悔してるくらいだぜ。……まぁ、タロもいるし、俺らの溜まり場も遠くはないし、総長復帰もいいなとは思ってるよ」


 キヨが探るように俺の目を観察する。それに対して素直に答えたりしないけどね。キヨは俺の言葉の真意を測りかねているはずだ。


「…………。次の質問だ。この写真の生徒はお前か?」


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