笑顔の野田狼現る




SIDE:小麦

 ギャー!! ななななんで野田先輩が1年の教室に来るのさっ! 威嚇してる! 周りの人間すべてを敵と見なしてるさー!!


「タロ、迎え来てくれてサンキュな」

「ううんっ。俺が早く鈴音に会いたかったんだもん」


 『もん』!?
 野田先輩が語尾に『もん』!?
 目を逸らしてたクラス中が思わず野田先輩を見ちゃったじゃん!
 目が合っただけで殴りかかるって有名で恐ろしくて見れないのに、驚きの余り僕も見ちゃったさー!

 ……う、えぇ!?
 野田先輩がこっち見てる! こっちを見てる気配がするさー! でも見ない! 見て確かめたら最後! 目が合った瞬間に地獄行きさ!!


「野田先輩と食べに行くんやったら俺らは遠慮しとこか?」


 ナイス! 山田ナイス!
 帰ろう。もう2人は置いて僕帰りたいさ!


「一緒していいでしょ? 野田先輩?」


 さーえーじーまぁー!
 ここは山田の意見に合わせる流れさ!


「当たり前じゃん。いーよな? タロ」

「いーよ。でも鈴音の隣は俺だからな……サエジマクン?」


 ……恐っ!
 オーラが恐いさ!
 でも見ない! 見ることはできないさ!


「お前ほんとに甘えただな」

「だって俺、鈴音の犬だもん。犬はずっとご主人様のそばにいるものだよ?」


 鈴音って本当に何者なのさ! 野田先輩が犬!? ご主人様って……なに!?
 うわ! いつの間にか教室に誰もいないさ! くそー……いち早く逃げやがって……。僕も逃げたいのに!

 どうやら誰もいないことに鈴音も気付いたみたいさ。でも思考はとんちんかん。


「あれ? もー誰もいないじゃん。早く行かねーと食堂混むんじゃねーのか?」

「学食は混んどるかもしれんけど、寮の食堂やったら空いとるやろ」

「えぇー、俺ハラペコだよ。寮まで歩いて帰ってらんねー」

「じゃあ俺が抱っこしてあげる!」

「アホか。んなダセーことされんの嫌だっつの。自力で帰る」

「じゃあ、帰ろうぜ」


 鈴音と冴島が立ち上がって、山田が自分の荷物を手に取ったところで、校内放送が入った。

『生徒会からの連絡でーすっ。1年A組、栗原鈴音君。一般棟生徒会室まで来て下さーい。繰り返しまーす。1年A組、栗原鈴音君、今すぐ一般棟生徒会室まで来て下さいねー! 待ってるよ〜?』

 坂元先輩さー! お声が聞けるなんて、野田先輩に出くわしちゃったけど、今日はいい日さー!!


「はぁー? 俺ハラ減ってんのにー! ……メシ食ってからでいいかな?」

「バカ。すぐ行ってこい。ここで待ってるから」


 再び席につく冴島。山田もそれに倣って荷物を置いて、近くの席に座った。

 待つって……。……まままさか、野田先輩と4人で……? い、いまの内に、ぼぼぼ僕だけでも帰るとか……なし?


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