お役立ちタロ




 まずは学園全体を覆ってる塀から出ないといけないが、さすがにあの高さは飛び越えることはできなさそうだ。
 正門なら足をかけるとこがあるからいけるだろうけれど、門番に見つかるといけないし……。つーか、まずそこに行くまでに時間がかかる。誰かに見つからないとも限らない。
 冷静に考えて、キヨとかタロもカズも抜け出してたはずだから、どっかに抜け穴とかがあると思うんだけどなぁ。
 とりあえず、寮から一番近い塀まで行き、塀の周辺を注意深く観察しながら歩いた。

 ……あった。
 足場が作ってある。これを使えば飛び越えることは容易そうだ。このなぜか敷地内にあるでかくて無駄な森のおかげで、寮からも校舎からも見えないって訳だな。


「よっ……、と」


 1.5メートルほどの高さの足場に登り、そこからジャンプして塀の上に手をかけ、懸垂の要領で自身の身体を持ち上げて、塀の上に登った。4メートルはある塀から飛び降りる。これくらいならば、音も無く着地するのも問題ない。

 あとは駅までの足だ。それについては初めから考えていたことがある。
 そしてそれは期待した通り、足場から出た場所のすぐ近くに、青いビニールシートをかけられて置かれていた。
 ビニールシートの中身はタロのバイクだ。タロとカズはいつもバイクで現れていたのだから、この学園に置いている可能性は高いだろうと思っていた。
 そして、タロは以前から鍵をヘルメットを一緒に置いておく習慣がある。こうしておかないとヘルメットを被り忘れて、俺に叱られるからだ。俺の躾の成果だな。

 無断拝借ではあるが、タロのバイクを学園内にエンジン音が聞こえないであろう距離まで押して歩いた。ある程度の距離まで離れたところで、認めたくないけどちょっとだけ小さめな俺の身体にはそぐわない大きなバイクに跨り、吉原駅へと向かった。


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