可愛くて仕方ない同士




SIDE:鈴音

 食堂に戻って晩メシを再開するため、エレベーターに再び乗る。それにしても、この甘えたワンコはよー。大体、タロと一緒にいること自体マズイのに一緒にいるなとか言えないし。こいつめ、俺に可愛くてしゃーないと思わせるコツを心得てやがる。
 ……まぁ、キヨにリンと栗原鈴音が同一人物だってバレても、レオンであることさえバレなきゃいいってことにするか。
 でもなー、こんなカツラと眼鏡で変装してるのが普通じゃないから、その理由を聞かれんのが嫌なんだよなー。こんなことなら最初からリンの格好して編入すりゃよかったぜ。タロとキヨがいたとは誤算だった。やりにくい。

 ……それにしても『OVERFLOW』か。なんか懐かしい。
 確かあれは、どっかのお坊ちゃまが非行に走って暴走族に入っちゃったから更正してくれとかいう馬鹿みたいな依頼の時だったな。
 恐ろしい体験をさせて、二度と族なんかに入りたくないって思わせるためだけに『OVERFLOW』を作った。まあ、結構楽しかったし、いい思い出。

 ……しっかし、この変装の理由はなんて言ったらいいの?
 怪しまれない理由なんか全然思いつかねー。


「ねぇ、リ……鈴音、眼鏡かけないと、もう1階についちゃうよ?」

「おう、分かってる。……お前さ、俺がこんな眼鏡かけたりヅラ被ってんのどう思う?」

「ん? 鈴音はすっごく可愛いから、俺は隠してないといけないと思う。そんな可愛い顔見たら全校生徒が鈴音を好きになっちゃうよ。だから、誰にも見せないで?」

「なんだそれ? そんなのが聞きてぇんじゃなくてさー。タロにしか通用しねぇだろそんなのは」

「……まだ自分が可愛いって気付いてない……」


 なんかタロが小声で言った気がしたけど、先にエレベーターを降りた俺には聞こえなかった。


「あ? なんか言ったか?」

「なんもない。鈴音、やっぱりそれ変装なんだよね? ねぇ、瞳の色は黒が本当なの?」

「目は黒のカラコン」

「緑が本当の色?」

「それもカラコン」

「……ほんとのことは教えてくんないんだ」

「拗ねんなよ。ほら、あっちにダチ座ってるから、行こうぜ」


 本当の色……か。それを見せたらお前はどう思うんだろうな。
 これからはリンの時と同じスプレーで髪色変えてからカツラ被ろう。カツラが絶対に人前で取れないとも限んないし。カツラの下が地毛じゃあ、あまりに不用心だもんな。


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