タロ
うずうずする。心の底から嬉しさが溢れてくるみたいだ。
触れたい。抱きしめたい。
甘えたい。撫でてほしい。
俺は大人しく部屋まで付いて行って、俺に笑顔を見せてくれるまでいい子にして待った。
「リンっ!」
リビングのソファに座ったリンの足元の床に座って、細い腰に腕を回し、お腹に顔をくっつけるようにして、抱き締めた。
ほんとにリンだぁ。さっきまではデカイ眼鏡と長い前髪が邪魔で顔見えなかったけど……。
リンの匂い、リンの膝、リンの腰、抱き心地も変わってない。
「おぅ。久しぶりだな。お前ここの生徒だったのか」
リンはごく自然な動作で、俺の逆立てた赤髪を崩さないように、頭を撫でてくれた。顔がニヤける。
「うん。ねぇリン、俺を置いてどこ行ってたの? 半年も……俺寂しかった」
リンが作ったチームもいきなり解散して……携帯も繋がんなくなって、会えなくなって。
俺、ほんとに辛かったんだよ?
「悪かったな。まぁそっちは片付いたんだ。今日からはこの学園に通うことになったから、一緒にいられるぞ」
「ほんと? もうどこにも行かない?」
「うーん……まだ分かんねぇ。でもそのうちまた消えるよ」
「やだ! 俺もつれてって? お願い……。もうリンがいないのはやだよ……」
「お前ほんとに甘えただな」
「うん。リン、大好き。甘えんのリンだけだよ。だからお願い、ずっとそばにいて?」
リンが普段はどこにいて、なにしてるのか……何も知らないけど、俺、どうしてもリンのそばにいたいよ。
「無理だっつの。俺は根無し草みたいな生活が性に合ってるし、1つの場所にずっとはいられねーの。お前は家継がねぇといけないだろ?」
「リンのそばにいれないなら継がない」
「お前なぁ……」
「お願い。リンと一緒にいたいよ」
駄々っ子みたいに甘えたら、結局はいつもリンは俺のお願いを聞いてくれた。
もう離れたくない。リンにまた会えなくなるって考えただけで、涙がこぼれそうなほど溜まっている。もしかしたらこれは願望が見せたリンの夢かもしれないと思ったら、涙腺が壊れたみたいに涙が溢れた。
「お、おい! 泣くなよ、タロ、な? 俺が悪かったから。何も言わずに消えたりして悪かったよ、ごめんな。ほら、ギューってしてやるから。おいで」
俺より30センチも小さい身体に甘える。俺の頭を抱きしめて、背中を撫でてくれた。
「うーん……とりあえずその話はやめ! 保留! まだ先のことだから。それよりさっきのことだ。お前さっきみたいに無抵抗な奴を殴ったり、よくしてんのか? 何人も病院送りにしたって聞いたぞ」
リンの怒った声に身体がビクンと震える。俺は慌てて言い訳をする。リンに嫌われたくない。
「それは……リンがいなくなって、辛くて……ずっとムシャクシャしてて……ごめんなさい! もうしない! でも俺、意識なくした奴は殴ってないよ? 言いつけ守ってた」
「はぁ……。……まぁ、いい。これからは絶対にするな。理由もなく殴るなんて最低だぞ」
「わかったよ、もうしないよ」
「次したら、おしおきだからな。チビって言ったことも今回だけは水に流してやるよ」
「わかった。ごめんね。嫌いにならないで? 俺、リンに嫌われたら生きてけない。死んじゃうよ」
「なんねーよ、バカ。俺は食堂に戻るぞ。ダチ待たせてんだ。俺もまだメシの途中だったし。タロは食ったのか?」
「まだ」
ダチ? って誰だ。絶対俺もついてく。そんで、そいつをリンに見つかんねーようにシメて、リンに近づかないように脅して消す。
「じゃあ一緒に食おうぜ」
「うんっ!」
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