ペロッと嘘吐きます
カードキーだけを手に持って、上機嫌で部屋を出ようとする鈴音。俺は慌てて静止する。
「おい、眼鏡かけないで行こうとして、見えてんのか?」
「えっ! 俺眼鏡してなかった!?」
他の奴にこいつの顔見られたくねぇ。俺だけのもんにしたい。顔も身体も心も全部独占したい。ライバル増やしてたまるかよ。
「伊達なのか?」
「う……あぁ、まぁちょっと事情があって……」
……動揺してるのか?
「そうか。じゃあ、ほら。かけとけよ。寝てる間にでも外れたんだろ」
本当は俺が取ったんだけど。まぁこの顔じゃあ伊達眼鏡でもして隠した方がいいよな。大方、理事長か寮長にでも言われたんだろ。俺のことも注意されてたみてーだし。
「なんつーか、俺が言うことじゃねーかもだけど、眼鏡外すなよ? 俺はもう見たから俺の前ならいいけど、他の奴の前では絶対かけてろ。分かった?」
SIDE:鈴音
「お、おぅ。外さない」
なんでこいつこんな必死なの? もちろん仕事で変装してんだし外す気はねーけど、……やっぱ俺の顔って気持ち悪いのかな。
目の色をみんなと同じ黒にしても、受け入れられないのかな。所詮、カラコンだけど。
「鈴音? どうした?」
「あ、いや、メシ! 行こうぜ!」
「あぁ。カードキー持ってんな?」
「持った持った! 行くぞー。待ってて俺のアップルパイちゃん!!」
「あ? アップルパイ好きなのか?」
「好き好きぃ! でも俺はスイーツを差別しないぞ。優劣なんかねーの!」
「…………」
「なんだその顔ー。甘いもん食わねーと頭働かねーんだぞ! 偉大なんだ」
「はいはい、わかりましたー」
「なんっか腹立つ」
SIDE:空牙
スキップでも始めそうなほど軽やかに前を行く鈴音を、後ろから眺める。
『好き好きぃ!』
とか……可愛すぎる! 俺も言われてぇ……。
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