冴島空牙




 眠っているルームメイトの唇に自身のそれを合わせ、少し開いた隙間に舌までねじ込んだ。口の中が甘く感じる。舌も柔らけー……。


「んむ? ん゙ー!!?」


 ルームメイトはすぐに目を覚まし、甘い咥内を堪能していた俺の舌を思い切り噛んで、その上、膝蹴りを繰り出した。


「ゴホォ……!」

「なにすんじゃゴルァ!」

「いれぇー!!」


 み、みぞおちに膝蹴り……。ちょっと勃起しかけてたのが完全に萎える激痛に悶絶する。
 そいつは途轍もなく素早い動きでソファから文字通り飛び退き、俺から距離を取った。


「誰だテメェ? ……あ、お前か! 冴島ってやつは! 今日からルームメイトの栗原鈴音です! でもよろしくしねぇぞ! テメェコラァ! 何しやがんだこのヤロー!」


 怒りながら自己紹介って……。変な奴。
 でもこの感じじゃ印象が悪すぎる。なんとか挽回しねぇと。あの可愛い顔と最高のケツが……!


「いや、悪い。寝ぼけてた。さっきまで部屋で寝てて、ほんと……悪いことしちまったな」

「寝てた? お前部屋にいたの?」

「あぁ、朝からずっと寝てた」


 ほんとは今、実家から戻ってきたばかりだけど。


「なんだよ、寝ぼけてたのか。蹴ったりして悪かったな!」

「俺も悪かったし、おあいこ」

「なんだー、お前って割といい奴じゃん! 前評判が悪かったからさーマジで下半身男なのかと思っちゃった」

「ははは……」


 誰だ、それ言った奴。殺す。


「そういや何年なの? 俺タメ口きいちゃってるけど」

「1年だよ」

「なんだ、タメか! じゃあ空牙って呼んでいいよな! 俺も鈴音でいいし!」

「おう。とりあえず晩メシ食い行こうぜ。腹減った」

「俺も俺もー!」


 笑うと更に可愛いじゃねーか。声もまだ声変わりしてねぇ、とか? 喘がせてみてぇ。よがった表情見てみてぇ……。

 でも、こりゃ長期戦かな。見るからに鈍感でノンケっぽいし、童貞だろ。
 いい友達ってポジションから攻めつつ、男同士の快楽を覚えさせるっていう作戦っつーか、触りたいだけ。
 唇、柔らかかった。おまけに口の中はほんのり甘くて、もし蹴れなきゃ、キスだけで完勃ちしてたかも。この俺が。


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