1階
寮の正面扉の前まで来た。出入口の方から1階を見渡す。
「寮で一番人がいるのが1階。特にこのロビーは結構いつも人が多いよ」
さっきまでは数人しかいなかったロビーに20人程の生徒がいる。全員が俺達の方を見て、口々に話しているのが聞こえる。いや、聞こえるように言っているのかもしれない。
寮長を見るのが久しぶりで嬉しいだの、かっこいいだの抱かれたいだの何だのって、本当に男同士で言ってんのかよ。
俺の悪口も聞こえるしさ。ダサイのは分かってんだよ。わざとだよ。わ・ざ・と。
ハズレかよーとか言ってんじゃねぇぞ。当たりたくねぇっつーの。
「……みたいですね」
「それから、さっき入ってくる時は荷物多くて、ズルしちゃったんだけど、寮に入る時と、寮から出る時は、カードキーをこの機械にかざさないと通れないからね」
「あぁ、そういう仕掛けだったんですか」
入る時気になってたんだよ。この駅の改札機みたいなヤツ。まさに改札機みたいなもんなのね。
「そう。これで誰が寮にいて、誰がいないか管理してるんだ。22時が門限だから、それ以後の外出は俺か生徒会の許可が必ずいるよ。あと、学外に出るときも俺か生徒会の許可を取るようにね」
「厳しいな……」
「まぁ、一応みんなお金持ちのお坊ちゃまだからね。俺は大体そこの寮長執務室にいるようにしてるし、学園では2年A組だから、用があったらどっちかに来てね」
「はい」
「それから、エレベーターの左にあるのは寮のコンビニ。大抵のものは売ってるよ。あそこにないものは、自分の部屋にあるパソコンでも買えるし、学外に出て買ってもいい。ただし、外出届を出して、門限までに帰って来ること」
「わかりました」
「じゃあ次はあっち。食堂ね」
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