1206号室




 俺の部屋になる1206号室の前までやってきた。部屋のネームプレートにはしっかりと『栗原鈴音』と書いてある。その隣に『冴島空牙』と書かれたプレートがある。ルームメイトの名前だろう。
 『くうが』でいいのか読み方は。仮○ライダーであったな。昔から地味に仮○ライダーが好きな俺である。
 仮○ライダークウガに思いを馳せながらネームプレートを凝視している俺に寮長は思い出したように言う。


「あ、そうだった。ルームメイトの冴島なんだけど、性格悪いし、性生活は乱れてるし、親衛隊はあるしで、本当に気を付けてね」

「……はい」


 性生活って……。


「ごめんね、空いてるのここか、もっとひどい奴のとこしかなくてさ。こっちのがまだマシだと思うから。とりあえずこの荷物置こうか。鍵開けてくれる?」

「あ、はい」


 カードキーでドアロックを開け、ドアを開いて寮長を先に入れた。


「ありがと。じゃあ、お邪魔するねー。あー、まだ冴島はいないのか。そうそう、送られてきた栗原君の私物、栗原君の部屋に置いてあるから。こっちね」


 まず、部屋に入ると右手にトイレと風呂場だと思われる扉がそれぞれあり、左手には立派なシステムキッチンがある。
 正面にはリビングへのスライドドアがあって、寮長はそれを開いてリビングのさらに左へ進んだ。

 ……広い。ここ学生寮だろ? リビングは12畳ってとこか? リビング挟んで両側に、1つずつ私室があるんだな。寮長が行った方が俺ので、向かいが冴島って奴の部屋か。豪華にも程が……。俺の学生寮のイメージっつったら、1つの部屋を2人で、しかも2段ベッドなんだけどなぁ。見事に打ち砕いてくれやがって。俺の密かな憧れを……。

 リビングは、2人掛けのソファが1つ、ガラスのローテーブルが1つ、それから部屋の隅にテレビが1つという何とも殺風景なものだった。
 部屋の観察を続ける俺の私室に入って、寮長は机の上に教科書を置いた。


「ここが栗原君の部屋。あっちは冴島の。鍵付いてるから、大丈夫だよ。必ず鍵を締めて寝るようにね。絶対締めるように!」

「どんだけ冴島ってヤツはヤバイんですか」


 俺も自分の私室に入り、備え付けのベッドの上に制服と鞄を置いた。
 私室の中は、真っ白なシーツのベッドと、真っ白なレースのカーテン、学習机、その上に置かれたパソコンがあるだけで、あとは私物であるキャリーケースしかなかった。


「冴島はね、もはや下半身だけの男だから」


 えぇー……。


「さっ、寮内の案内に行こうか!」

「あ、はい」


 下半身だけって……。頭の中はヤることしかねーってこと? いや、まぁ、そういう奴が知り合いにいないこともないけども、冴島は……ゲイ、なんだろうなぁ……きっと。


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