親衛隊
「親衛隊っていうのは、ファンクラブみたいなものかな」
「……生徒会役員の?」
「いや、役員以外にもあるんだ。ランキングって呼ばれてる人気投票みたいなのが年に1回あるんだけど、それの上位者には、大体ある」
「人気投票、ですか」
「本来は、全校生徒による生徒会役員選挙。会長選挙と副会長選挙があってね、学年関係なく、それぞれにふさわしいと思う人に投票するんだ」
「なかなか合理的ですね」
立候補した自信過剰な奴の中から選ばなくてもいいということか。まぁ、いくら優秀であってもその気が無い生徒からすれば迷惑極まりないだろうけど。
「でも、別名がある。会長選挙は通称『王ランキング』、副会長選挙は『姫ランキング』って呼ばれていてね、選挙の色合いは薄れてしまってるんだ」
「なんですか? それ」
「王は抱かれたい人、姫は抱きたい人。つまりみんな、抱かれるならこの人、抱くならこの人、って具合に投票するんだよ」
「は?」
「ゲイが大半なんだ。この学園」
「……ゲイ、ですか」
山奥で、しかも男だらけの中に、半ば軟禁状態で過ごすと思春期真っ盛りな野郎共はお互いを性の対象にしてしまうのだろうか。
……分からない世界だ……。
ん? てことは、だ。キヨは学内で1番抱かれたい男だと男から思われてるわけか。
……可哀相に。ご愁傷様。グレたくなる気持ちも分からなくはないよ。
「それでね、親衛隊は対象の人物に近づく人を許さない。制裁が下されるから、絶対に関わっちゃだめだよ」
「寮長には親衛隊あるんですか?」
「あるね」
「ちなみにランキングは何位なんですか?」
「俺は王の5位」
「それで寮長に?」
「寮長はランキングに関係ないよ。前任者からの任命制」
「そうでしたか。……あの。寮、遠くないですか?」
「管理棟からだと、寮の入り口まで普通に歩くと15分くらいかな」
「すみません。重いの持たせちゃって……」
「そんなのいいって。ほんと気にしないで。教科書くらい余裕だから。栗原君の部屋に荷物置いたら、寮内案内するからね」
「お願いします」
なんて善良な人なんだ……!
開放された大きな入り口をくぐり、寮の中へ入って俺は盛大に驚いた。心の中でね。
まるで異空間。学校にある施設だとは思えないほど豪華で、広さのある、まるで一流ホテルのロビー。天井からはでかでかとシャンデリアがぶら下がっている。
俺は呆気にとられながらも寮長の後ろをついて行った。
金持ちってのは、やっぱ、違うなぁ。
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