15歳、成長期真っ只中です
「吉住君、彼が編入生の栗原鈴音君だ。寮のことを一通り説明してあげてくれ」
「はい」
吉住と呼ばれたこれまた憎らしい程整った顔の先輩(たぶん)は、俺に与えられたものが置かれている机に歩み寄った。
「栗原君の荷物はこれで全部ですか?」
「あぁ、そうだよ。1人じゃあ持てないだろうから、持ってあげてくれ」
「はい。俺は高等部寮長の吉住太一。よろしく。俺が教科書を持つから、栗原君は制服と鞄持ってくれる?」
「あ、はい! すみません。ありがとうございます」
促されるままに、急いで制服と通学鞄を持った。
寮長だったのか。カッコイイ上に優しそう。ここが山奥の男子校じゃなければさぞかしモテただろうに。
「平気? 持てる?」
「大丈夫です」
「よし、じゃあ行こっか。理事長、失礼します」
さくさく事を運ぶ寮長。慌てて後ろをついて行く俺に、宝生が声を掛けてきた。
「栗原君、くれぐれも気をつけるんだよ」
「はい……?」
そんなに危険な仕事ではないと思うんだけどな。時間はかかるだろうけど。
俺は少し首を傾げながら理事長室を出て、寮長が待つエレベーターに乗り込んだ。
「理事長の言う通りだよ。この学園では気をつけなくちゃいけないことがあるんだ。色々とね」
「気をつけなくちゃいけないこと?」
あれ、依頼のことじゃなかったのか?
「たとえば、君みたいな小さい子は……襲われることがある」
小さいって言った! 今小さいって言った!! そりゃ確かにあなたほどはないですけどね!
まだ成、長、期っ!!
「集団もあり得るからね。気を付けて」
「大丈夫です。自分の身は守れます」
はっきり言って、こんな所でぬくぬくと生きているお坊ちゃまが集団でかかってこようと、俺に危害を加えるのは不可能というものだ。総長なんぞをやっているキヨであっても俺に触れることすら叶わないだろう。
俺達はエレベーターを降り、管理棟を出て、舗装された道を寮に向かって歩き出す。
「他に気をつけることは?」
「生徒会役員には関わらないこと」
「なぜですか?」
「生徒会役員というか、親衛隊がある人、かな」
「親衛隊?」
……ってなに?
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