何でも屋レオン




SIDE:宝生誠

 美しいプラチナブロンドの髪をなびかせて、女性と見紛うほど綺麗で妖艶な雰囲気を纏う少年が、窓の桟に腰掛けている。
 ここは私の書斎であり、息子たちは疎か妻でさえも入らないこの部屋に、彼はとても馴染んでいるように見える。
 見目形の美しい少年は少し微笑み、私に向かってこう言うのだ。


「ご依頼の内容は?」


 私は面食らった。彼が声を発することによって彼の存在感が増したのだ。いや、簡単に言えば、その美しい容姿から想像するより遥かに美しい声に私は驚いたのだ。


「なにに驚きなのです? 僕が誰なのか? どこから入ったのか? いつからいたのか?」


 外見にばかり囚われていたが、彼を見た瞬間から、彼が誰なのかは分かっていた。

『とても美しい少年』

 私が聞かされた特徴はそれだけであったが、それだけで十分だった。


「レオン君、だろう? 確かにそれらは気になるが、私が驚いたのはそんなことではないよ」

「……あなたも今までの依頼者と同じだ。そして何に驚いたのか教えては下さらない」


 少年の表情が陰る。私は咄嗟に驚いた理由を説明していた。


「それはそうだろうね。君の美しさに驚いて絶句したなどと、本人に言いたくないものさ。特に、君が相手にするような金を持った人間は無駄にプライドが高い」


 今度は逆に少年が面食らった様子で、大きな目をさらに大きく見開いた。そして、また微笑む。


「意外とご冗談がお上手なのですね。さぁ、ご依頼の内容を教えていただきたい」


 本当のことを言ったのだが、少年は全く意にも介さず、ビジネスの話へ戻った。本気で自身の容姿に自覚がないようにも思われたが、それは演技かもしれない。彼は、裏で名高い何でも屋レオンなのだから。真意など見せるはずも無い。


「その前に、中へ入りたまえ。窓などに座っていては寒いだろう」

「あぁ、今は真冬……僕はよくてもあなたに寒い思いをさせてしまいますね。では、失礼しましょう」


 少年は窓の桟から降りて、後ろ手に窓を閉めた。


「そこのソファにでも座ってくれ。君が席についたら、話を始めよう」


 少年は右手を胸にやり、少し上体を前に倒し、美しく、笑った。


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