頭はいいはずなんですけども




 空牙が風呂場から出てきた。濡れた頭にフェイスタオルを乗せている。ジャージを履いているだけで、上半身は締まった身体を惜しみ無くさらけ出している。うっすらと割れた腹筋。少し浮いた肋骨。しっかりした二の腕。俺とは全く違う男の身体を食い入るように見つめてしまう。


「どうした? ぼーっとして」

「え? あ、いや……。なんでもねぇ」

「……あー……」

「何?」

「さっきは、悪かった。なんつーか、調子に乗っちまったっつーか、止まんなくてよ」

「…………」


 そう面と向かって言われると、なんか照れる。居心地が悪い。


「いや、俺の方こそ……なんか、うん」

「……うん」

「あのさ」

「ん?」

「なんで……俺にキスしたんだ?」



 俺の質問に、困ったような表情で笑う空牙。


「分からないか?」

「……キスすんのが好きだから?」

「逆」

「逆?」

「うん。じゃあ、おやすみ」

「え、あぁ……おやすみ」


 逆って……キスが嫌いってことか? じゃあなんでしたんだ。訳分からん。
 ……もうプリン作って寝よ。


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