キモヲタ




SIDE:鈴音

 バレンタインパーティーまであと3日と迫った放課後。学園内はなんとなく浮き足立っているような気もする。しかし、所詮は男子校。盛り上がっているのは当然、みんな男。学園内の見回りをしながら、俺はしょっぱい気持ちになる。


「男が男にチョコやって、何が楽しいのかねぇ?」


 キョロキョロと見回りながら歩いていた俺は、前方から走ってくる人間への対処が遅れてしまった。
 お互い咄嗟に避けて、ぶつかりはしなかったものの、相手が抱えていた書類がその場に散らばってしまった。


「あ、すいません」


 素直に謝る俺。
 しかし、相手は気が立っているようだ。俺の顔を睨んで、怒鳴り散らしてきた。


「どこ見て歩いてんだコラァ! こっちはテメーと違って暇じゃねんだよ! さっさと拾え!」


 ……カッチーン!


「……誰が拾うか! 俺はちゃんと謝っただろーが。テメェこそ……って、あ? 司?」


 そう。俺とぶつかりそうになったせいで、書類をぶちまける羽目になったのは、司だった。
 俺は怒りをおさめた。落ち着こう。クールに。そう、ビー・クール。

 ……うん。生徒会長なんだもんな。忙しいよな。バレンタインパーティーのための書類だろうし。そら走りもするわ。
 俺が悪い……ということにしてやらなくもない。


「キモいオタクなんかに司呼ばわりされる覚えはねんだよ! マジ殺す!」


 どこが譲歩しきれていない俺だったが、一応は怒りは治まった。
 しかし、司は俺がリンだとは知らないため、キレてきたオタクに対して怒りを増幅させた。しかも、見知らぬオタクに呼び捨てにされたせいでプッツン。
 躊躇なく司が殴りかかってきた。当然、俺は軽く避ける。

 しゃーねぇ。このまま喧嘩してみっか。気に入ったらチームに入れてやってもいいかな。


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