最初で最後の依頼
SIDE:鈴音
初めて見る、翔太の涙。
翔太の重みを感じる。痛い程抱きしめられる身体が、翔太の涙でじっとり濡れた皮膚が、俺に命令を下す。
『翔太を守れ』
翔太はずっと、俺を守ってきてくれたじゃねぇか。
「好きなようにしろ。俺がお前を受け入れてやるから」
「あかん」
「お前なら、いいから」
「あかんねん。お前を傷付けるだけや。絶対いつかお前が後悔する。そんなんしたない。……俺は、どうしたらいいか分からんねん! 俺は、お前を愛する資格なんかないのに、お前を求める気持ちがどうにもならん! もう逃げたい……。逃げてしまいたい。なぁ……、どうしたら、楽になれるん……?」
「翔太……」
「俺がもし、俺やなかったら……お前に愛してもらえたやろか」
ずっと組織にいて、辛くない訳ないよな。やりたくもないことやらされて、人一倍優しいお前が、苦しまない訳ねぇんだ。
俺だけが逃げて、後始末はお前に任せて、今もずっとお前に守られてる。醜い俺を綺麗だと言ってくれた。好きだと言ってくれた。
「俺には何ができる? お前のために」
「レオン……」
「何でもする」
「なぁ、……1個だけ、頼んでええか?」
「あぁ」
「俺を、忘れんとってくれ。恨んでもいい。憎んでもいい。ただ、お前を愛した気持ちはほんまやから。お前のことをずっと想い続けるから、それだけは信じて欲しい」
「……信じるよ」
「ありがとうな」
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