最強男 番外編 | ナノ


▼ 真夜中の出来事

ぼそぼそと人の話し声に意識が浮上する。何を話しているのか迄は聞き取れない。
仁は寝返りを打った。

まだ少し寝たりない。もう少し寝かせて欲しい。
布団を被った時見えた時計はまだ午前3時半過ぎだった。

布団を被り直して再び意識を手放そうとするのに、ぼそぼそと話す声に邪魔される。
そのおかげで意識ははっきりして来た。


「……あれ?」
隣に寝ているはずの千里がいない。それに気付いて上半身を起こした。

開いたドアの向こうに千里の右半身が見えた。小さな声で話をしていたのは千里だったのだ。

聞こえるのは千里の声のみ。よくよく聞けばそれは日本語ではなく英語だった。
内容はよくわからない。中学高校大学と英語は勉強したはずなのに、仁は英語を話すことはもちろん聞き取りだって出来なかった。
結局、身に付いていない。

「……バァイ」
携帯電話の閉じる音。千里が部屋に入って来る。

「悪い。起こしたか」
「あ、うん。……今の誰?」
千里が英語で話すのを仁は初めて見た。

「高校時代のダチ。家業を継いだっていう電話だ」
「家業?」
「マフィア」
「マフィア!?」
「イタリアンマフィアだからな」
仁にしてみれば、マフィアなんて映画の世界でしか見たことはない。それですら、作り物だ。本物を見たことはない。いや、千里の家の家業ですら、刑事になるまでヤクザは映画の世界だった。

「すっげー」
「何が」
言いながらベッドに潜り込んで来る。

「イタリアンマフィアって事は、イタリア人?」
「ああ。……時差を考えない奴だ」
千里は眠そうに答えた。

「でも英語だったよね?」
「あいつと話すとイタリア語より英語になるんだ。……ほら、寝るぞ」
千里は眠かったのかすぐに寝息をたてた。


バイリンガルだな、と思うと同時に自分の英語力の無さに情けなくなった。

寝ようと目を瞑る。
あれ、と目を開けた。

イタリア語より、と千里は言った。

「イタリア語も喋れる?」
3ヶ国喋れるとなればバイリンガルでなく、トライリンガルだ。

「さすが名門校出身……」

あまり見ることのない千里の寝顔。その頬にキスを落として、千里の腕にしがみつくようにして眠りについた。



その後、仁が本屋で英語の参考書を数冊買ったのは言うまでもない。




※こちらに出てくる千里の高校のイタリアンマフィアのお友達(ロミオ)はこちらに出てきます。

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