最強男 番外編 | ナノ


▼ 穢れなき龍へ

部屋のベッドで仁が寝息をたてていた。
暖かい毛布にくるまって。

仁が左。千里が右に寝る。左側に座ると仁が寝返りをうった。
腰に腕を絡めてくる。

「仁? 起きてるのか?」
けれど返事はない。

規則正しい仁の寝息が聞こえるだけだ。

仁の髪をかき上げて額にキスを落とす。

「おやすみ」
そっと仁の腕をほどき仁の隣に横になる。

今度は千里が仁の腰に腕を絡め眠りについた。
求めて欲した仁のぬくもりを抱きしめて。



何かが触れて目を開けた。
仁が上から千里を眺めていた。

「おはよ、千里」
目を閉じてまたゆっくりと開けると、仁は千里の髪をなでた。

ああ、仁の手かと1人納得する。

「めずらしいね、千里がこの時間まで寝てるの」
「今、何時だ?」
「8時半」
「お前、時雨さんの稽古は?」
「終わってシャワー浴びたとこだよ」
まだ仁の髪は滴がたれるほどだった。

「髪、ぬれてるぞ」
「ん」
首にまわしていたタオルで拭こうとする仁の手を止め、千里はタオルを取り上げ丁寧に拭いてあげた。


「今日はゆっくりでいいの?」
「ああ、今日はずっと屋敷にいるつもりだ」
「いいな」
そう言いながら窓の外を見る。

つられて外を見れば雪が降っていた。
「今日はどこに行くんだ」
「新宿。弾と一緒に」
「早く帰って来いよ」
「うん。せっかく千里いるしね、なるべく早く帰る」
上を向いて千里を見上げる仁がにこっと笑顔を作る。


「千里の寝顔、初めて見た」
「そうか?」
「いつも千里、早いし。寝るのも俺より遅いから」
「朝から貴重なもの見れたな」
「うん。いい事ありそう」
「いい事ね。あとはドライヤーで乾かせ」
「ありがと」
礼を言う仁のうなじに唇を寄せ、朱の印をつける。

「さらにご利益あるかもな」
小さく笑って、仁の身体から手を離した。

仁はあるかもね、と照れたようなぶっきらぼうな返事を返した。


いつまでも、仁。
ピュアのまま。

穢れを知らない新米ヤクザ。


墜ちるなら一緒に。
そうじゃないなら、ピュアのまま……。


080217

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