最強男 番外編 | ナノ


▼ 千歳と花火

「花火大会に行こう」
仁の一言に千歳は喜んだ。

「ほんと!?」
千歳は目を輝かせて仁を見た。


約束をしたのは千歳の幼稚園が夏休み入ってすぐの事。
8月中旬、まだ千歳は花火大会に連れて行ってもらってなかった。

夏休みになってから何回か花火大会はあったのに。


「仁のウソツキ」
その呟きを聞いたのが千草だった。


弾の行方がわからなくなった日、その日も花火大会だった。

千里でさえ子供の千歳にはかまえなかった日。弾の事と仁の事でいっぱいだった。

千草は、千歳の手を握った。

「千歳、花火を見に行きましょう? お供が仁さんではなく、僕ですが……、一緒に花火を見てもらえませんか」
寂しそうにしている千歳に千草は声を掛けていた。

弾の事を放って置くわけにもいかなかったが、何度も仁に約束を反古され千歳がかわいそうになった。

千草1人いなくても、弾は捜せる。けれど、花火は夏だけのイベント。

「うん」
千歳は、はにかんだ笑みを浮かべた。


仁が約束を反古したのは、決して本意ではない。それなりに仁も千里について、忙しかったのだ。


「ごめんな」
仁は次の日、千歳に謝っていた。

「次こそ行こうな、千歳。指切りしよう」
ゆびきりげんまん、と歌うように2人は指切りをした。



「仁、金魚!」
次の花火大会は屋台が出ていた。

千歳が指差した先に金魚すくい。

「やりたい?」
「うん!」
手にしていたかき氷を受け取り、千歳に1回分のお金を握らせる。

水色の甚平を着た千歳が、金魚すくいをする子供達より可愛く映る。

「仁、見ててね」
金魚を1匹すくい、すくった為に水の抵抗を受け破れた薄い紙。

金魚すくいのおじさんがすくった金魚を水と共にビニールの小さな袋に入れて千歳に渡してくれた。

「1匹すくえた」
笑みを浮かべる千歳の頭を撫でた。

「千歳、金魚すくい上手いな。俺下手なんだ、金魚すくえた事ないよ」


屋台見ながら先へ進む。


ドンッ!
1発目の花火が上がった。

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