御剣が、何もわからなくなってしまった。


ある日突然、何の前触れもなく、御剣は壊れた。
今までの記憶がないどころか、常識的なことすら、今の彼には分からない。
誰かが話しかけても、まるで聞こえていないかのように何も答えない彼。
彼の記憶は、心は、真っ白な状態に戻ってしまったのだ。赤ん坊のように。
来る日も来る日も、彼は病室のベッドから一日中窓の外を眺めている。
飽きずにずっと、ずっと、空を見つめている。
そんな御剣もただ一人、成歩堂の呼びかけには応えた。


「御剣」


成歩堂が名前を呼べば、窓の外から目をはなし、その無表情な顔が成歩堂に向けられる。
虚ろな瞳が彼を捕らえると、
ふにゃり、と御剣は笑う。笑う。笑う。



窓の外には、気持ちが悪くなるくらいの青空が広がっていた。





20120320
たとえ御剣に信頼出来る同僚がいて、部下がいて、
伴侶がいたとしても、
心の奥にいる絶対的な存在は成歩堂だけだと思う。

何気なく描いた4コマから作った駄文でした。
病室で窓の外を眺める御剣に成歩堂が声をかけると、
無表情で成歩堂の方を向いて、可愛く微笑むっていう。
かつての御剣はもういないから、そんな笑い方になってる。

窓の外を眺めているのは言うまでもなく、
空の色に成歩堂を重ねているからです。
青色への慈しむ心っていうか、愛おしさだけは覚えているんだと。
たとえ彼らの関係が友情でも愛情でも。




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