暗く影を落す扉
全てを拒絶するように、堅く閉められている
この扉の向こうには、長い間、誰も入れずいる
入れない、そして、誰も入ろうとしない
誰も知らないから
誰も気付けないから
誰も気付かないから
この闇を、この扉を、
何年も、何年も、誰も訪れない


そして、一人の男が、たどり着く


開かない扉
強い拒絶
それでも男は、必死に、必死に、
その扉を開けようとする
開かない
開かない
開かない
心が傷ついても、
身体を傷ついても、
それでも開けようとする
開かない
開かない
開かない
開かない


あいた



ゆっくり開く扉
誰も開けられなかった扉
誰にも開けさせなかった扉
誰が?


「御剣」



扉の向こうの、一人の少年
小さく丸まって震えている
何年もの月日が流れて、今はもう青年だけれど
少年の頃と変わらない、怯えた瞳に映すのは、


「お父さんを殺したのは、君じゃないよ」


青年がこちらを向く
酷く疲れ切った顔で
酷く怯えた瞳で
青年が映すのは、


「なるほどう?」



青い青い空
扉の外はもう、闇なんかじゃない
広く澄み渡る、輝かしい青
青年の瞳が光にきらきらと揺れる


「行こう、御剣。僕と一緒に」


手を伸ばす
その手は拒絶されることもなく、
彼に届いた


「御剣」


彼を呼ぶ声が、


「もう、一人じゃないよ」



やっと、届いた






20120315

扉の向こうの小さな部屋に、
もう、彼の姿はない









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