成歩堂が最近連絡してこない。
つい先日までは、嫌というほど構ってきたというのに。
電話はもちろん、検事局まで訪れていた。
それなのに、急に彼は私の前から姿を消した。

私の前に現れたのも突然だった。
何年も親交がなかったというのに、私を想い弁護士になった彼。
私を信じ、一人戦ってくれた彼。
いつまでも、いつまでも、私の傍にいてくれるだと思っていた。
それが、当然の事のように、思ってしまっていた。
私は彼を特別に想っていた。
かけがえのない存在だと思っていた。
たとえ、私の周りにたくさんの信頼できる仲間が出来ても、
彼だけは特別で、彼だけは代えようのない人だった。


けれど彼は、そうは思っていなかったようだ。


無理に会いに来た私を、彼は黙って見つめている。
感情のない瞳は、私が映っていた。
ひどく滑稽だ。
君を想っている私は、こんなにも必死な顔をしていたのだな。


「成歩堂」


私の声は、君に届いているのだろうか?


彼の瞳が揺れる。
私を真っ直ぐに見つめる君は今、何を思っているのか。


「ごめんね」


掠れた声が、静かな部屋に響く。


「ごめんね、御剣」


何を思って、君は謝っているのだ。
謝るのなら、何故私の隣に、君はいないんだ。



「もう、傷つきたくないんだ」



成歩堂の瞳から、何かが溢れ出た。






20120321
御剣視点でした。
『だから、サヨナラ』を書くときに、
自分以外の人たちと上手くやってる御剣を見て、
これ以上傷つくのが怖い、だから離れるんだっていう成歩堂を書こうと思ってたんだ。
でも何故か書き終わったらそんな素振りなくて…。

そんなわけで、
『だから、サヨナラ』を作品的にも、成歩堂的にも救おうを思ってこれ書いたんだけど、
全然救えなかったorzzzzz






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