似た者同士
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私の彼氏は、よく周りに人が集まる。

それは外見のせいでもあるし、内面のせいでもあるし、彼の肩書きや人望の厚さのせいでもある。

つまるところ、彼はどこにいても人目を引き、人気者なのだ。

例えばデートの最中、ミナモシティのショッピングモールで、ほんの数分別行動して集合場所に行けば、彼の周りには老若男女たくさんの人が集まっている程に。


「ダイゴさん、こっち向いてー!」

「僕、いつかダイゴさんみたいに強くなるよ!」

「ファンですー!応援してます!」

「実物も爽やかイケメンで良い眺めじゃのう…」

「ダイゴさん付き合ってくださーい!」

「俺、ダイゴさんになら抱かれてもいい!」




「・・・」

若干女性の割合が多いのは致し方ない。
というか、最後の男性について誰かつっこんでやれ。いいのか、抱かれても。

「・・・はぁ」

そう。
私の彼氏は、ホウエン地方で有名なデボン・コーポレーションの副社長でもあり、チャンピオンでもある彼、ツワブキ・ダイゴだ。

特に彼に不満がある訳でもない。というか、逆に彼の方が私に不満がある方が多いだろう。
私は特筆して秀でているものはないし、容姿だって人の目を引くほど美人というわけでもない。
そんな彼が私と付き合っているという事実を、未だに私が信じられない。彼の目は節穴なんだろうか。

いやまあ、冗談は最後の言葉だけにしておいて…。

遠くから、たくさんの人に笑顔で対応している彼の様子を見て、これはデートの続行は無理だなと判断して踵を返し、ショッピングモールの外へ出る。

適当なところに寄って、いつもデートが中止になったときに慰めてもらっているミクリのところに行こう。そうしよう。

「カフェにでも寄ってケーキを食べるか、少しだけ海を眺めてから行くか…」

どっちにしようと悩んだところで、とりあえずはダイゴに一言入れないとと思ってポケナビを手に取る。
先に帰ると連絡しておけば、彼も私を探さなくていいだろうとメールを作成していれば、件の彼から着信が入り応答する。

ちょうどいい。言うだけ言って電話切っちゃお。

「あ、ダイゴ?ごめん私ちょっと…」

口を開いて言葉を紡いだ瞬間、後ろから誰かに抱きしめられる。

「『"先に帰るから"は認めないよ』」

右耳にあてているポケナビから聞こえる彼の声と、左耳から聞こえる彼の声。両方から聞こえた声に慌てて顔をあげれば、笑顔だが目が笑ってないダイゴがいた。

急いでポケナビをポケットにしまって彼から離れれば、先ほどとは変わって眉間にシワを寄せていた。

「美咲はいつもそうだ。僕が人に囲まれていれば遠慮して離れようとする。今回のような流れで、美咲が先に帰ってそのままデートが終わることが、最近ずっと続いているじゃないか」

まるで私が悪いみたいな言い分に苛つきを覚えたが、その事については事実だからと黙っていれば、我に返ったのか私から気まずそうに顔を背け、深呼吸をした。

「…すまない。文句を言いたかったわけじゃないんだ。僕だって美咲がたくさんの人に囲まれていたら、遠慮してその場を離れると思う」

その言葉に、私の気持ちがわかるなら、何故彼は怒っているのかと首を傾げていれば、顔を少し赤くさせた彼が、言いにくそうに言葉を紡いだ。

「…デートの途中で終わったとき、ミクリのところに行って話しているんだろう。僕はそれに、いつも嫉妬していた」

美咲を放置していた僕に、文句を言う資格なんてないけどねと苦笑する彼に、だんだんと笑いがこみ上げてくる。

「……、ふふっ」

「な、なぜ笑うんだ…!」

いやたしかに僕も大人気ないとは思ってたさ!とか
いつもミクリに自慢されていたんだ!なんて話すダイゴに向かって手を差し出した。

「デート、続けるんでしょ?」

今度は放置しないでねと念を押せば、もちろんだと力強く頷いて私の手をとった。

結局、私もダイゴの周りに集っていた人たちに嫉妬していたのだ。大人気なく。





結局、似た者同士だね。私たち。





(ねえ、どこ行く?)
(どうせなら誰も邪魔の入らない、僕の家に行こう)
(それ良い。行こう)


   

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