月が綺麗ね(TOX長編主→FGO)
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【ちょっとした設定】
・TOX長編主
・n番煎じ
・2回目の旅が終わってゆっくりしていると、突然目の前に召喚陣が現れてカルデアに召喚された。
・人理焼却の話しを聞いて、大変そうだからと協力している。
・賢王ギルガメッシュとはなんやかんやあって恋人に落ち着く。









私はたまに、ギルガメッシュに向けて言っている言葉がある。

「ねぇ、ギルガメッシュ」

「なんだ」

「月が綺麗ね」

1人がけのソファに座り、書類を睨んでいる彼に向けていつもの言葉を吐けば、彼は眉間に皺を寄せて私を見る。

「またそれか。今は昼間であるし、ここは室内だぞ」

「えぇ、そうね」

それ以上何かいうこともせずにニコニコと笑い、彼はため息をついて書類に顔を戻した。

彼は知らない。
私が言っている言葉の意味も、その返事も。
あ、でも、マスターなら知ってるかも?
…まぁ、教える気もないけど。


ゆったりと時間が流れる部屋にドアをノックする音が響き、ギルガメッシュが声をかけた後にマスターが入ってきた。

「エリシア、周回行ける?」

どうやら、マスターのお目当ては私らしい。

自分の物のように広いベッドの上に寝転んでいる私を見て声をかけた彼に二言で返し、靴を履いて立ち上がった。

「じゃあね、ギルガメッシュ。行ってくるわ」

「行ってこい行ってこい。月が綺麗だな」

棒読みで言いのけたその言葉にマスターはぎょっと目を見開き、私は声を上げて笑った。

「死んでもいいわ」

行きましょマスター。

マスターの手を引いて扉を開ければ、後ろから声を荒げるギルガメッシュ。

「勝手に死ぬことは赦さんぞエリシア!!聞いているのか!!」

その言葉にも笑いながら扉を閉め、マスターの腕を離して2人で歩く。
先程のやり取りを思い出して肩を揺らして笑った。

「ふふ、ふ…っ、」

「びっくりしたよ。王様でもあぁいうの言うんだね。でも、エリシアの返事の意味はわかってなかったね…?」

マスターの追い討ちに再び声を上げて笑い、実はと経緯を話した。
話を最後まで聞いたマスターは苦笑する。

「なるほどね。言葉の意味まではわかってなかったのか」

「そういうこと」

頷いた時、ん?と首を傾げたマスターはまさかと私を見る。

「…エリシアの前世ってさ、日本?」

その言葉に、そういえば話してなかったかと頷いた。

「そうよ。こことは違う世界の日本だけどね」

「気付かなかったよー。そうだったんだね」

「まぁ、20年もエクシリアの世界にいたら馴染むわよね」

「なるほど」

その後はマスターと、味噌汁が恋しいことや学生時代あるあるなどの話しで盛り上がりながらレイシフトルームへと向かった。



*   *   *



1ヶ月後



今日も今日とて、ギルガメッシュがソファで仕事をしているなか、私は広いベッドの上でゴロゴロと転がっている。

「ねーえぇー、ぎるがめっしゅー」

「なんだ」

「つきがぁーきれいねぇー」

つい先程までシンデレラの格好をしたエリザベートと一緒に周回していたため、彼女の影響で歌いながらいつもの言葉を伝えた。
しかし、いつもは"何言ってんだ"などの反応を返すギルガメッシュからの返事がない。

不思議に思い顔を上げて彼の方を見れば、ギルガメッシュは機嫌が良さそうに口角を上げて私を見ていた。

「………なに?どうしたの?」

思わず眉を顰めて尋ねてしまったのは、怒らずに許してほしい。

しかし、そんな私を気にすることもせず、ギルガメッシュは手元の資料に目を落としながら次の言葉を放った。

「貴様と共に見る月だからであろう」


その言葉を聞いて数秒。


やっと脳で理解して、がばりと腕をついて起き上がった。

慌てて彼を見れば、こちらを見て酷く愉しげに細められた目に上がった口角。

「どうした。この我からの愛が不満か?」

「なっ…、だってこの前…っ!」

指をさしながらも動揺しすぎて声が震える。
そんな私を見て、彼は声を上げて笑った。
そのままソファから立ち上がり、ベッドの端に座って私の頭を撫でる。

「今までは意味がない言葉だろうと気にせずにいたが、あの時雑種が酷く驚いていたからな。気になって言葉の意味を調べたまでよ」

しかし貴様にも、奥ゆかしいところがあったのだな。
直接言葉に出さず、遠回しに愛の言葉を表現するなど。

「なぁ、エリシア」

意地悪気に歪んだ瞳に、頬に伸ばされた綺麗な手。
言い返すこともできず、ぶわりと頬に赤みが差した。

「…っ、伝わらないから言ってたのに!馬鹿!」

「馬鹿とはなんだ、馬鹿とは。だいたい、最初に言ったときに意味も一緒に言わんか!馬鹿者!貴様からの愛を無碍にしていたではないか!」

「言うわけないでしょ!1人で楽しんでたのに!」

2人でわーわー騒ぎ、一息ついたところで2人揃ってベッドに倒れ込んだ。

ギルガメッシュに優しく頭を撫でられながら、額にキスを落とされる。

「"死んでもいい"なんて軽い言葉は言わん。貴様はこの先、死んでからも我の隣にいろ」

いいな、と念を押されて苦笑しながらも頷く。

「貴方が許してくれる限り、私はギルガメッシュのそばにいるわ」

返事を聞いた彼は、満足気に頷いた。

「永劫赦そう。貴様ならばな」


もう暫くは、この綺麗な王様に振り回されるようだ。

   

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