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「美咲」
「はいはい」
放課後、帰りのHRが終わった瞬間に私のところに来たルカに頷き、手早く帰る準備をして学校を出た。
駅前の新しいパンケーキ屋さんに来れば、ルカの目が輝いた。
「うまそう」
「美味しいって評判だよ」
ただ、注文してから焼くから15分くらい待たされるが。
お店の中に入り、そのことを注意事項として説明があり、了承して注文すれば、適当に雑談開始。
「いいの、セイちゃん」
「いいの。そっちこそいいの、バンビ」
「いいんだ。美奈子ちゃんが幸せなら、俺も幸せ」
それに今は親友もいるし。と笑顔で言われ、ため息をつく。
「私をバンビの代わりとして見ても、意味ないんじゃないの」
そう言えば、ルカは目を見開いて、悲しそうに笑った。
「…わかってる」
「…不器用ね」
「あ、特大ブーメランだ」
「うっさい、バカルカ」
* * *
「…あ、セイちゃんだ」
「…!」
「…琉夏、こいつ借りるぞ」
パンケーキ屋さんを出たところで設楽先輩と出くわし、今までより強めに腕を掴まれて連れ去られる。
ルカはルカで、笑顔で手をひらひらと振ってるし、なんなんだもう。
「設楽先輩、はなし…「嫌だ」」
「俺はもう、ピアノからもお前からも逃げない」
言葉を遮られた挙句、とんでもない言葉が聞こえた。
私から逃げないってなんだ。逃げてたのか設楽先輩。私の方が先輩から逃げてた気がするが。
…なんて言えず、黙って設楽先輩に引きずられるまま、人気がない公園まで連れていかれた。
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