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「ママー、かばんどっかいっちゃったー」


「鞄がどこかに行くってどういうこと!?」


「ふふっ、ママ、今日のお弁当貰っていくよ」


「あ、うん!って、ちょっと待って!ステラ、先に玄関までパパを見送るよ!」


「はーーーい」


パパー、今日はやく帰ってきたら一緒にあそぼー。

もちろん。じゃあ、ステラのために、早く帰れるようにお仕事頑張るよ。

やったー!


そんなやりとりをしている2人を後ろから見ていると、自分でもわかるぐらいに顔が緩む。


6年前、ダイゴさんとの間に子供ができた。
周りは祝福してくれて、出産したときにはテレビやラジオで報道され、出産祝いが全国から届いたほどだ。
本当に、周りの人たちに感謝しかない。


玄関まで3人で向かい、ダイゴさんが靴を履いたら彼に鞄とお弁当を渡す。


「あ、ちょっと待って」


ついでに、靴を履いたときに歪んでしまったネクタイも整えることも忘れない。

そんな私を、ダイゴさんは優しく微笑みながら見守ってくれる。


「…はい、できた。いってらっしゃい、ダイゴさん」


「ああ、行ってくる。お弁当もありがとう」


「どういたしまして」


「ステラも、スクール頑張るんだよ」


「うん!」



「じゃあ行ってきます」


「行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃーーーい!!」


手を振り合って扉の向こうへと消えていくダイゴさんを見送り、少し急ぎながらステラのスクールの準備をする。
7歳になるまで親がスクールまで送迎をしないといけないため、2人で家を出た。

ステラと手を繋ぎながらスクールへ向かう。


「そうだママ!きいて!スクールでバトルの練習があったんだけどね、」


「うんうん」


ステラはこうやって、スクールであったことを楽しそうに話してくれる。
クラスに馴染めているようで、親としては安心だ。

そして、彼女の次の一言で顔を引きつらせることになる。


「バトルでね、上級生に勝ったんだ!!」


先生も褒めてくれてねー。と嬉しそうに話すステラに、私は内心頭を抱えた。



この娘、しっかりと私とダイゴさんの血を引いている。



まあ確かに、チャンピオン同士の子供なんて、もうサラブレッドみたいなもんだよなぁ…。

うーん…と内心ステラに対して感心していれば、ステラは笑顔でこう言い放った。


「ステラ、将来チャンピオンになるの!」


この娘、しっかりと私とダイゴさんの血を引いている。(2回目)


「…ははっ」


ステラの宣言に笑ってしまって怒られたが、立ち止まってしゃがみこみ、ステラの視線と合わせる。


「なれるよ、ステラなら」



「…ほんとう?」


嬉しそうに微笑みながら聞いたステラに、もちろんだと頷く。

ステラに、私とダイゴさんがかつてチャンピオンだったことは言っていない。
隠しているわけではないし、ステラから聞かれれば答えるだろう。

でも、ステラがチャンピオンを目指すというのなら、


…ちょっと面白そうだし、時が来るまでは言わないままでもいいかもしれない。


今日の夜、ステラが寝た後にでもダイゴさんに報告しようと心の中で決めて、再び歩き出してスクールへと向かう。


「ママ、ステラはほんきだよ!?ほんとにチャンピオンになるからね!!」


「はいはい。今からその時が楽しみね」




























「…ってことがありまして、」


「あははっ、流石、僕とエリシアの子供だね」


夜、ステラが寝てしばらくして、今日の朝にあったことを話せば、ダイゴさんは楽しそうに、そして嬉しそうに笑った。


「その時は、まだミクリがチャンピオンなのかな。楽しみだね」


「そうですね。それに、チャンピオンになったら登録作業をするために奥の部屋に入りますし…。そこで、私とダイゴさんがチャンピオンだったの、バレちゃいますね」


「ああ、そうか。あそこには歴代のチャンピオンのデータもあるからね」


なんで黙ってたのか怒られそうだね。と笑顔で話すダイゴさんに、私はその時のことを考えて小さく笑う。


「楽しみですね」


「ああ。とってもね」


「私、ダイゴさんと出会えて良かったです」


私には勿体ないですと笑えば、ダイゴさんも笑う。


「僕の方こそ、僕にエリシアは勿体ないくらい良い奥さんだよ」


これからもよろしくね。
私の方こそ、よろしくお願いします。




テーブルを挟んで笑い合った。
そして私は願う。
こんな幸せな日々が、毎日続けばいいと。




そして数年後、見事チャンピオンになったステラに"なんでチャンピオンだったの教えてくれなかったの!"と、ダイゴさんと2人で怒られることになることになるのだった。

 

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