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「お綺麗ですよ、お嬢様」

「ありがとう、ティア」


純白のドレスに身を包み、準備を手伝ってくれたティアにお礼を言う。

今日は、私とダイゴさんの結婚の挙式当日だ。












「長いようで、短い半年でしたね」

彼女の言葉に深く頷き、苦笑する。

「でも結局、ティアと2人でほとんどの準備を終わらせてしまったわね」

「仕方ないですよ。この半年間、特にダイゴ様は忙しそうでしたからね」

石を探しに行く暇もないほどに。とティアが笑えば、私も笑った。

控え室の扉がノックされたかと思えば両親が入ってきて、お母さんはともかく、お父さんが既に泣き始めた。

「エリシア…!よく似合っているぞ…!!」

おいおいと泣くお父さんの背中を、お母さんは一度バシンと良い音をさせながら叩けば、私を見る。

「おめでとう。今日の主役はエリシアよ」

芸能人より目立ちなさいと笑顔で言われ、流石にそれはないと苦笑した。





「そろそろお時間になります。ご移動をお願いします」


両親とティアと4人で談笑していれば部屋の扉が開き、時間だと会場のスタッフに呼ばれた。

その呼びかけに両親は控え室から去っていき、私は後ろに控えているティアと、会場の扉までゆっくり歩く。











カツン..



カツン...






一歩ずつ進むごとに靴の音が壁に反響して響き、その音に緊張して手足の末端の感覚がなくなる。更に足は、小さく震えだした。

「・・・っ」

もう少しで目的の場所に着くというところで立ち止まり、深呼吸をする。


「お嬢様?」

「…ごめん。緊張して…」

自身を落ち着かせるように深呼吸を繰り返していれば、後ろにいたティアが私の前に回り込み、両手を包んでくれる。

「ティア…?」

「お嬢様は、どんな時でも果敢に立ち向かわれるお方です。大丈夫、お嬢様は世界で一番お美しいですよ」

頑張ってください。と微笑みながら言われ、それに私の緊張も少しずつほぐれていく。

いつの間にか、足の震えは止まり、手足の温度も戻っていた。

「ありがとう、ティア」

私の言葉にティアは笑い、再び私の後ろに控える。

そのまま目的の場所までたどり着けば、そこには父が立っていて、父と腕を組む。

「綺麗だよ、エリシア」

涙を流しながら微笑んで言われた言葉に、堪えきれずに私も涙を流した。

「ありがとう、お父さん」


"――、新婦の入場です"


私の言葉と同時に目の前の扉が開き、ゲストの人たちがわぁ…!と盛り上がる。

「さぁ、行こうか。歩けるかな?」

「大丈夫よ、ありがとう」

顔を見合わせて笑い合い、会場内に一礼をすれば、入口で待っていてくれた母にベールを下げてもらう。
その後再び父と腕を組み、一歩ずつ、ゆっくりと赤いバージンロードの上を歩いていく。

ゆっくりと歩みを進めていれば、やがて父はぴたりと足を止め、彼と握手を交わす。
そしてそれが終われば、父は私を彼に預け、自分の席へと向かった。

視線で父を見送っていれば彼に手を握られ、顔を彼へ向ける。

「…ダイゴ、さん」

そこには、いつも着ている黒のスーツとは真逆の、白のタキシードに身を包んだダイゴさんの姿。
彼は私を見て、照れくさそうにしながらも私に言葉をかけてくれた。


「…綺麗だよ、エリシア」


「…!」


たった一言。

けれどその一言で私の涙腺は崩壊し、思わず顔を俯かせ、泣き顔を見られまいとブーケを顔に近づけて隠し、頭を彼の肩にもたれてしまう。

そんな私にダイゴさんは笑い、ぽんぽんと背中を2、3度軽くたたくと私の肩を抱いた。

「さ、行こう」

「、…っはい」

グローブで目元の涙を拭って、ダイゴさんとゆっくりと歩みを進めて壇上まで上がる。


神父は私たちを一瞥した後、ダイゴさんに顔を向けた。

「新郎ダイゴ、あなたはここにいるエリシアさんを妻とし、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」

「誓います」

神父の問いに淀みなく答えたダイゴさんに、神父はにっこりと笑って頷き、次いで私に顔を向けた。

「新婦エリシア、あなたはここにいるダイゴさんを夫とし、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」

「…はい、誓います」

私の今の返事は、震えていなかっただろうか。大丈夫だろうか。

緊張で身体が震える中、気力を振り絞って言葉を吐き出し、神父を見る。

私の返事を聞いた神父は、これまたにっこりと笑い、次いで会場内に顔を向けた。

「皆さん、お二人の上に神の祝福を願い、結婚の絆によって結ばれた このお二人を神が慈しみ深く守り、助けてくださるよう祈りましょう」

そう言ったあと数秒瞳を閉じ、次に目をあければ手で私たちに向き合うようジェスチャーで合図したため、私たちは向き合った。
その時に私は左のグローブを外し、横に置かれた小さな机にグローブとブーケを置く。

「誓いの指輪を」

神父の言葉を合図に指輪が運ばれてきて、まずダイゴさんが指輪を受け取れば、私の左手をとって薬指に指輪を嵌める。
しっかりと指輪が薬指におさまれば、次に私が指輪を受け取り、ダイゴさんの左手の薬指に嵌める。

お互いがお互いの指に指輪を嵌めれば、顔を見合わせて笑い合う。

神父は私たちを見て微笑ましそうに笑ったあと、ダイゴさんを見た。

「では、誓いのキスを」

その言葉にダイゴさんは、ゆっくりと私にかけられたベールを上げ、頬に手を添える。

「綺麗だよ、本当に。…愛してる」

「…私も、愛しています」

見つめ合ったあと、私たちはキスを交わす。

少しの後、顔を離して神父に向き直れば、神父は深く頷く。

「今、この両名は天の父なる神の前に夫婦たる誓いをいたしました。神の定め給いし者、何人もこれを引き離す事あたわず。…おめでとう」

最後に穏やかな声で祝福され、私たちは微笑む。

司会者の指示で会場の外へ出れば、たくさんのゲストからのフラワーシャワーを浴び、その後にブーケトスをする。



「…っ、えい!」



私が投げたブーケは放物線を描き、




「……え、」



ポスッと良い音を立てて、カトレアの手の中へとおさまった。

その瞬間に湧き上がる、周りの女の子たちからの羨む声。

慌てているカトレアに笑っていると、会場のスタッフが披露宴の会場に移動するよう呼びかけたため、ゲストはみんな披露宴会場に。私とダイゴさんは着替えるために控え室へ向かった。

 

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