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「勝負あり!勝者、ジムリーダー!」


「…っあー!今日も負けた!!」


目の前でメタグロスが倒れるのを確認して審判がコールをすれば、私はがしがしと頭を掻いてメタグロスをボールに戻し、膝から崩れ落ちる。

「もう諦めて、大人しく1つ目のジムから回って来たらどうだ」

元々、ここは最後のジムだぞ。と呆れたように言う彼に私は首を横に振る。

「そんな時間、私には無いの」

早く彼を倒せるぐらいに強くならないと…。

何度感じたかわからない焦りに思考がめちゃくちゃになっていると、彼の手によって立たされ、目線を合わせられる。

「そろそろ教えろよ。3か月前にいきなり現れて、トキワシティのジムリーダーである俺を倒すまで、お前が焦りながらバトルを続ける事情を」


彼、もといカントー地方の元チャンピオンであり、現トキワシティのジムリーダーであるグリーンに真剣な表情で問われ、力なく事情を話す。

「実は……」


















「はあ!?婚約者を倒すために、その婚約者に黙ってこっちに来た!?しかもプロポーズも保留中だぁ!?」


しんっっっじらんねぇ!!!!と憤慨するグリーンとは反対に、小さくなる私。


ポケモンセンターで手持ちのみんなを回復させた後、トキワジムの中にある、グリーンの執務室で事情を話せば、こっぴどく怒られる。

「まず、そんな長期間プロポーズを保留にするな!地方を出るなら場所も明記しろ!ちゃんと婚約者に連絡も取れ!!」

相手に失礼だろ!!と本気で怒る彼に、ダイゴさんへの申し訳なささが募る。

「ちゃんと連絡はとろうと思ってたんだけど…」

ホウエン地方のポケナビが、カントー地方で使えなくて…。

私の言葉に、グリーンが言葉を詰まらせ、代わりにため息を吐いた。

「………つーか、連絡手段は他にあるだろ。手紙とか」

「カントーからホウエンまでの郵便ってやってないらしくて、郵便局の人に断られたの……」

彼が案を出していくも、ことごとく私が正当な理由をつけて却下していくため、とうとう彼も頭を抱え出した。

「もう、1回帰れよ地元に……」

「今度地元に帰る時は、彼を倒す時って決めてるの!!」

「その相手に、今とてつもなく失礼なことしてるくせに堂々と言うな!!」

叫んだ後に頭をがしがしと掻いた彼は立ち上がり、"出かけてくる"と一言残して部屋を出て行った。
彼が私(というか客人)を放り出して外出するなんて初めてのことで、戸惑いながら私もジムの外へ出たが既に彼の姿はなく、ため息をついた。

「私も、帰れるものなら帰りたいよ…」

そう呟いたとき、女性の叫び声が聞こえたと思ったら、1人こちらへ走ってくるのが見えた。
女性は私を見て"そいつを捕まえてほしい"と、走っている男性を指差す。

「そいつ、私のポケモンを奪ったのよ!!」

「…メタグロス、足止めしよう」

彼女の言葉を聞いてボールからメタグロスを出せば、男も自分のポケモンを出してポケモンバトルへ入る。

「俺は捕まらねえよ!!ゲンガー、シャドーボール!!」

「しねんのずつき」

そんなものが効くかと小さく指示を出せば、メタグロスはゲンガーに技をぶつける。
1度の技で目を回して倒れたゲンガーを見て、畏怖を称えた目で私を見た彼は、すぐに駆けつけたジュンサーさんに連れて行かれた。

「本当にありがとうございました!」

「お気になさらず。気を付けて帰ってくださいね」

お礼を言ってきた女性に気にするなと言って別れ、彼女に手を振っていれば、急に力強く肩を掴まれ、次いで後ろから抱きしめられた。

「はなし……っ、…!?」

抵抗しようとした瞬間、久しぶりに嗅いだ匂いと見慣れていたスーツに目を見開き、その人物を見ようと顔を上げれば、泣きそうな顔で私を見ている彼と目があった。


「やっと見つけたよ、エリシア」




「…ダイゴ、さん」




 

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