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どこだ。
彼女はどこへ消えたんだ。
「……そうか。侍女であるキミにも目的地を言わず、行ってしまったんだね」
「お力添えできず、申し訳ございません」
「いや、いいんだ。どうか気にしないでくれ。もう一度エリシアに連絡をとってみるよ」
申し訳なさそうに謝罪する彼女の侍女に慌てて首を横に振り、彼女の家を後にする。
3か月前、エリシアから珍しくメールで連絡が入った。
いつもは僕から彼女へ連絡することが常のため、気分が高揚するのを感じつつ読む。
最後まで読み終われば、そうかと肩を落とした。
"突然のご報告で申し訳ありません。
今から、とある方のところで修行してきます。
いつそちらへ戻るかは決めてませんが、必ず、ダイゴさんを倒しに行きます。
プロポーズのお返事が遅くなってしまうこと、どうかお許しください。
もし他に魅力的な方が現れたとしたら、どうか私のことは気にしないでください。
それ程許されないことを、私は今からしようとしているのですから。
どうかお体にお気をつけて。"
最後まで目を通し、出会って初めて彼女に怒りを覚えた。ふざけるなと。
僕が何年、エリシアに恋い焦がれているか。
今まで、どんなに素敵な女性が現れようとも、眼中にも入らなかったのだ。
僕がどれほどエリシアを愛しているか。
それを当の本人は、理解していないのだ。
すぐに彼女に電話したが繋がらず、その後も何度も電話するが、繋がった試しは無い。
それからは諦めて、とりあえず彼女からの連絡を待つことにした。
僕と彼女が旅をしている約数年、連絡を取り合っていなかったため、"少し経てば彼女から連絡がくるだろう"と油断していたのだ。
姿を眩ませてから3か月経ち、様子でも見に行こうと考える。
さてどこへ行ったのか、と彼女の最後のメールを思い出し、はたと動きが止まった。
彼女は、"ある方のところ"とは書いたが、肝心の場所までは明記していなかったのだ。
それを理解したと同時に、身体が芯から冷える感覚を覚え、慌ててリーグを飛び出して彼女の実家へ向かった。
しかし、彼女の両親はおろか、昔からエリシアに付き従っているティアでさえ、彼女の行方はわからなかった。
がしがしと頭を掻き、空を見る。
エリシア、キミは一体、今どこにいるんだ。
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