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「やあエリシア。早速会いに来たよ」
「お待ちしてました、ダイゴさん」
私が実家に帰ってきた2日後、ダイゴさんは先日の別れ際での宣言通り、日をあけずに私の家にやって来た。
両親もティアも、数年ぶりに会った彼に挨拶し、今は私の部屋で2人で話している。
そういえばと、旅で仕入れた石の情報を彼に話せば、途端に目を輝かせて饒舌に話し始めた。
こういうところは変わってないなと小さく笑い、相変わらず引き込まれる話し方と内容に耳を傾ける。
「…で、その珍しい石なんだが、これがまた見つからなくて…。流石に何日もリーグを空けすぎて、四天王のみんなから怒られたよ」
これだよ。と資料に載ってある石の写真と、その下に書いてある特徴を読む。
それを見て、どこか見たことがあるなと首を傾げる。
「……ちょっと待ってください。…この石、見たことあるかも」
「本当かい!?」
机に身を乗り出し、目を輝かせて反応するダイゴさんに、笑いながら頷く。
「えぇ。ルネシティに向かう途中、ダイビングしている時に見た覚えが…」
その言葉に衝撃を受けたのか、私の前では珍しく足を組んで片手を顎にかけ、考え込む彼の姿が。
そう。ダイゴさんがいま話していた石というのは、私がルネシティに行くときに見た、どんな暗闇でも輝き、太陽の光を浴びせれば七色に光るという、あの石だったのだ。
あの時は、次回ダイゴさんに会った時に話そうと思っていたのに、すっかり頭から抜け落ちていた。ごめんねダイゴさん。
「ルネに向かう途中ということは、あの方面か…。…そうか、一度行って以降は、ずっと空から行っていたから見つからなかったのか……」
小さく呟きながら考え込む彼を眺めつつ紅茶とお菓子を楽しんでいれば、暫くして我に返った彼に謝られた。
「すまない。またやってしまったね」
「お気になさらず。むしろ、お変わりないようで安心しました」
笑いながら言えば彼は苦笑し、軽い咳払いをして話を戻した。
「エリシアも、まだ石について興味を持っていてくれてたようで安心したよ」
「もちろんです。ダイゴさんからたくさんお話を聞かせていただきましたので、旅の道中も楽しかったんですよ」
ありがとうと言えば、"お礼を言うのは僕の方だ"と返される。
「プロポーズは保留になったとはいえ、僕たちは婚約者だ。近いうちに、どこかへ出掛けよう」
「ぜひ。楽しみにしてますね」
彼のお誘いを二つ返事で了承すれば、本当に嬉しそうに顔を緩め、少しの熱を帯びた瞳で私を見る。
「僕も、とても楽しみだよ」
どこへ行こうか。そうだ、トクサネシティは、夜は星がとても綺麗に見えるんだ。この前は雲がかかっていて見えなかったけど、ぜひエリシアにも見てほしい。それにミナモシティでショッピングをするのも良いね。カイナシティの博物館へ行くのも良い。
「エリシアと一緒だったら、どこへでも行きたいよ」
そんな台詞をさらりと言われ、頬が熱くなるのを感じる。
ゲームではわからなかったが、このツワブキダイゴという男は、恥ずかしい台詞をさらっと言う節がある。
そしてそれが本心だと言うのだから、私はいつか彼にドキドキさせられすぎて死ぬかもしれない。
それから私と彼は、まるで数年分の隙間を埋めるようにお互いのことを話す。
そしてそれは、両親が"夕飯にしよう"と私の部屋へ呼びに来るまで、途切れることはなかった。
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