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ついに来た。

目の前に一本道が続く通路を一歩一歩踏みしめながら、私はこれまでの旅を思い出す。

大きい扉を潜る前に、今一度ポケモンたちの様子を見て、きずぐすりや状態回復のくすりはいらないかと確認する。

パートナーであるキュウコンをボールから出し、頭を撫でる。

「やっとここまで来たね」

私の言葉に頷くキュウコンの身体に抱きつき、お互いに頑張ろうと頷き合って、彼をボールに戻して今度こそ扉を潜る。

そこには、

「やあ、エリシア。待っていたよ」

私の婚約者でもある彼、

ツワブキダイゴがいた。

前回会ったのはトクサネジムに挑戦したときだったが、その時はあまりゆっくりできずに、お互いの姿をまじまじと見るなんてことは出来なかった。
つまり、私の記憶のなかでは、ダイゴさんの姿は旅に出る前のほうが印象に強いのだ。
少し見ないだけで、人はこんなにも成長するのかと目を疑ったが、それは彼も同じらしい。
私が近づくたびに微笑みから、驚きへと表情を変える彼に、挑戦者として挨拶をする。

「チャンピオンとお会いできて光栄です。…私が旅で経験し学んだ全てを、全力でぶつけてもよろしいですか?」

たぶん、話し始めたら暫く止まらないだろうとわかっていたため、挨拶もそこそこにモンスターボールを1つ手に取れば、彼は婚約者の顔からチャンピオンへのそれへと変わり、自身のモンスターボールを手に取る。

「あぁ。キミの全てを僕にぶつけると良い。僕が全てを受け止めた上で、捻り潰してあげよう」

「…負けませんよ」

初めて彼とポケモンバトルをした時とは違う。
あの時のように、彼に負けるだろうとわかった上で挑むわけではないのだ。

「…頑張って、キュウコン」

彼がエアームドを出すと同時に私もキュウコンを出す。
タイプ相性的には私が有利だ。
このまま流れに任せて、全力で戦おう。

「キュウコン、ほのおのうず!」


…負けない。絶対に。












それから私とダイゴさんは攻防戦を繰り広げた。


「キュウコン、かえんほうしゃ!」

「エアームド…!」

エアームドにまきびしを使われてはたまらないと、かえんほうしゃの一撃でエアームドを倒せば、逆にそれが彼の闘志に火をつけたらしく、後続にネンドールを出した。

「ネンドール、ひかりのかべだ」

「キュウコン、戻って。サーナイト、シャドーボール!」

まだキュウコンを倒されては困ると、キュウコンをボールに戻してサーナイトを出した。
そのままサーナイトがネンドールを倒してくれたが、その次に出してきたボスゴドラによって、サーナイトも、後続で出したチルタリスも、更にはライチュウも倒される。

「さぁ、まだまだいけるだろう?エリシア」

「もちろんです!ミロカロス、ハイドロポンプ!」

フィールドにミロカロスを出し、ハイドロポンプでごり押せば、今までのダメージの蓄積もありボスゴドラは倒れ、続いてフィールドにユレイドルが出される。

ユレイドルはたしかいわタイプも入ってたな…と、見た目からはわかりづらいタイプを思い出してそのままハイドロポンプを指示する。

私の記憶は合っていたようで、2度ハイドロポンプを当てればユレイドルは倒れ、次はアーマルドが出てきた。

「アーマルド、メタルクロー」

「…っ、耐えてミロカロス!もう1度ハイドロポンプ!」

「シザークロス」

残り2匹だというのに、余裕のダイゴさんに私は焦りを感じていた。

なぜ、手持ちがどんどん倒れていってその余裕なのか。
なぜそんなにも、涼しい顔をしているのか。

なぜ私は、こんなにも焦っているんだ。


…いや、いいや。
焦っているのは、負けたくないからなんだ。

小さい頃から決めていたんだ。
彼とこの場でバトルをすると。
あの頃のように、負けるとわかっていて挑むバトルではなく、私が成長して、彼に勝てるように強くなって、そして…



そして、ダイゴさんに勝つんだ。






1度深呼吸し、次に目を開ければ、もう焦りを感じてはいなかった。


「ミロカロス、なみのりだよ。なみのりでアーマルドに近づいてからみずのはどう」

私の様子が変わったのが伝わったのか、ダイゴさんは少し顔を歪めてアーマルドに指示を出す。

「…っ、アーマルド、みずのはどうは避けるんだ!」

ダイゴさんが慌てたようにアーマルドに指示を出したが、みずのはどうを避けることはできず、結果としてなみのりもみずのはどうも直撃して倒れた。

「…お疲れ、アーマルド」

気絶しているアーマルドをボールに戻し、ダイゴさんは笑って私を見る。

「強くなったね、エリシア。僕は今、とても驚いている」

「ミクリさんのところで修業しましたからね」

そう言えば、ダイゴさんはわかりやすく眉間にしわを寄せて文句を言ってきた。

「そう。そのことも後で話さないとね。まったく…、ミクリにも散々文句を言ったんだよ」

でも今は、バトルの続きだ!


最後の1匹になっても余裕の姿勢を崩さないダイゴさんは、フィールドにメタグロスを出した。

「さぁ、かかっておいで。結局、僕が1番強いということを証明してみせるよ」

「チャンピオンから引きずり降ろしてやります…!ミロカロス、みずのはどう!」

それからも、私とダイゴさんの攻防戦は続く。


勝つのはいったい、どちらなのか。

 

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