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「いい顔してるじゃねーか、チャンピオンの婚約者!俺を楽しませてくれよ!!」


「ほんっと、ダイゴさんいい加減にしてくださいよ!!!」


楽しそうにボールを中央に投げる彼に対して、私は怒りをぶつけるようにボールを中央に投げつける。

ジムリーダーや四天王だけでなく、リーグ本部のスタッフ全員に顔と名前を憶えられていたら怒りたくもなる。







ミナモシティで技構成を見直し、一泊して翌日チルタリスに乗ってポケモンリーグへと戻ってきた。

勢いのまま行こうと入口の扉を潜り、念のためジョーイさんにポケモンを預けようと近づいた。

そこからだ。私の怒りゲージがふつふつと上がりだしたのは。

ジョーイさんに話しかければ、昨日ぶりだと彼女から"エリシアさんね!"と名前つきで挨拶され、隣のフレンドリィショップに行けばこれまた"エリシアさんですね!会えて光栄です!"と名前つきで挨拶され。
そのほかにも、すれ違うスタッフや迷子になりそうになったときに道を教えてくれたスタッフにも"エリシアさんですね!"と呼ばれ…。(ちなみに、私は自分で1回も名乗ってない)


流石にこれは、ダイゴさんに直接物申さないと気が済まない。


対峙する彼、1人目の四天王であるカゲツさんは笑い声をあげた。


「昨日もリーグに寄ったんだってな。あいつ気付いてだぜ」


「それをあなたが知っているってことは、あの人また言いふらしたんですね」


歩くスピーカーかと心の中で悪態をつき、八つ当たりするようにサーナイトに指示を出す。

「サーナイト、ムーンフォース!!!全力で!!」


勝ってこの怒りをダイゴさんにぶつけてやる。




*  *  *


その後、カゲツさんに勝ち、2人目の四天王であるフヨウさんのもとへと進めば、これまた名前付きで挨拶をされた。


「エリシアさんですね!チャンピオンから、今日あたり挑戦に来るだろうと言われて楽しみにしていたんですよ!!」

「もう…、はやくあの人にこの怒りをぶつけたい…」


でもフヨウさんに恨みはないから、きちんとバトルで実力を見せつける。

彼女のポケモンはゴーストなのか、先ほどからゴーストタイプばかり出してくる。

ゴーストと相性があまり良くないため、シャドーボールを打たれてもいいようにメタグロスを先頭に出し戦ってもらうことにした。

「メタグロス!しねんのずつき!」

「ジュペッタ、うらみだよ!」

フヨウさんの指示を聞いて眉間にしわを寄せる。

ゴーストタイプとのバトルは、だいたい技回数を減らしてくるか、状態異常の技を使ってきてじりじりと体力を削られていく。

個人的に非常に、非常に戦いにくい相手だ。


しかし、ここで負けるわけにはいかないと必死に頭を回転させる。


「メタグロス、コメットパンチ!一気にきめよう!!」

「…っ、ジュペッタ!」

何回目かの技の応酬の後、ついにジュペッタが倒れて、フヨウさんは悔しそうに顔を歪めた後、楽しそうに笑みを浮かべて次のポケモンを出した。

「…いい。いいねエリシア!とっても楽しいよ!!」

出てきて、ヤミラミ!

彼女の声とともにフィールドに現れたのはヤミラミ。

ならこちらはと一旦メタグロスを戻し、サーナイトをフィールドに出す。

「サーナイト、ムーンフォース」

先制して技を放てば、効果が抜群だったヤミラミは一撃で倒れる。これは嬉しい。

小さくガッツポーズをすればフヨウさんは少し頬を膨らませながらヤミラミをボールに戻し、次のポケモンを出す。

「まさかフェアリータイプを持ってるとは思わなかったよー。サマヨール、お願い!」

ここから、更にジュペッタとサマヨールがもう1匹ずつ出てくるとはこの時は露ほどにも思わず、バトルが終わった時には半分死んでいた。




 

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