3030/62
トクサネシティのポケモンセンターで一泊し、翌日の早朝にポケモンリーグへ出発した。
ミロカロスの背に乗って海を進んでいる間に、ポケナビで方角を確認する。
「えーと……、ちょっと海流が面倒だけど、いけないことはなさそうだね」
頑張ってくれる?とミロカロスに尋ねれば、彼女は楽しそうに頷いてくれた。
その身体を撫でて、途中で出会うトレーナーや野生のポケモンと戦うこと数十回。
ついに、サイユウシティに辿り着いた。
ここはシティという名前がついてはいるが、建物はポケモンセンター一軒のみだ。
というのも、ここはポケモンリーグを目指す人のみが来る場所。
リーグへ続くチャンピオンロードの入口があるだけだ。
…だとしても、フレンドリィショップくらいは置いてほしい。
ポケモンセンターでみんなを回復してもらおうと立ち寄れば、ジョーイさんが嬉しそうに対応してくれた。
「このポケモンセンターに、人が来るのなんて久しぶりだから嬉しいわ」
彼女の言葉に納得して、少し立ち話をする。
「そういえば、先日チャンピオンがこちらにいらっしゃったんですよ」
「チャンピオンが?」
彼女の言葉に、なんでダイゴさんが…?と不思議に思って首を傾げると、ジョーイさんはふふふと楽しそうに笑いながら言葉を紡ぐ。
「"もうすぐ婚約者がこのポケモンセンターに来るから"って、その方が元気かどうか見てほしいとおっしゃっていました」
愛されてますね、エリシアさん。
名乗った覚えのない自身の名前を呼ばれ、驚きで目を見開き、次いで肩を落とす。
「最初から、私がその人物だとわかってたんですね…」
「ふふふ、ごめんなさい」
悪戯が成功したように楽しそうに笑うジョーイさんに文句を言う気もおきず、まぁ楽しそうだからいいかと思うことにした。
「ありがとうございました。チャンピオンによろしくお伝えください」
「かしこまりました。道中お気をつけて」
ジョーイさんとのお話をひと段落し、ポケモンセンターを出てチャンピオンロードに入る。
洞窟内の野生のポケモンは、流石ポケモンリーグ直前の場所にあると納得するほどの強さだった。
野生のポケモン捕まえて1つ目のジムに挑んでも普通に勝てるのでは…?という考えが少しだけ頭をよぎった。
「…さて、と。チャンピオンロード攻略に必要な技マシンを都度覚えさせて…。ポケモンリーグに着いたらポケモンセンターに1度預けて、チルタリスでミナモシティまで飛んで技マシン忘れてもらって…」
ぶつぶつと呟きながら洞窟内を進んでいく。
暗いところではフラッシュの技を。
大きな岩はかいりきを。
水の上はなみのりを。
滝があればたきのぼりを。
今まで集めてきた技マシンを次々に使いながら、ポケモンに覚えてもらいながら、奥へ奥へと進む。
今はキュウコンとライチュウがボールの外へ出ているため、1人と2匹で歩く。
「もう旅も終盤だね。はやかったなぁ」
「きゅう」
「ライライ」
キュウコンとライチュウは私の言葉に頷く。
たしかに、ライチュウはサファリパークでゲットしたし、ここまであっという間だっただろうなぁ。
でも時間に関係なく、キュウコンもライチュウも、もちろんほかのみんなも私にとって大事な友達であり仲間であり、家族だ。
キュウコンとライチュウの頭を撫でる。
「私と一緒に来てくれて、ありがとう」
今の自分の気持ちを素直に伝えれば、2匹は嬉しそうに笑う。
「きゅう」
「ライライ!」
返事をしてくれたかと思えば、ライチュウが私の手を引いて小走りになり、キュウコンは楽しそうに私とライチュウについてくる。
なんだかそれが楽しくて幸せで、小さく笑う。
「…ありがとう、みんな」
なんだか、胸の奥底で抱えていた不安が消えた気がする。
一歩ずつ、
彼がいるポケモンリーグへと
近づいていく。
← →