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フエンジムの中に入った瞬間、高い温度と湿度にあてられ、一気に体調が悪くなっていくのがわかる。

このジム、早く終わらせないと終わる。私が。

身の危険を感じつつ、スタッフにジム内の仕組みを教えてもらえば、足早にジムリーダーのもとまで向かう。

途中、ジムスタッフが勝負を仕掛けてこようとも、

「いけ、ドンメル!」

「ミロカロス、ハイドロポンプ」

ハイドロポンプ1回でバトルを終わらせる。

コンテストで覚えさせていて良かったと心底思いつつそれ一本で指示を出していった。



3〜4人のジムスタッフと戦ったところで、やっとジムリーダーにたどり着いた。

「よく来たな、挑戦者。この熱きポケモンでー…「すいませんバトル始めてもらっていいですか体調悪いんです」…う、うむ。よく見れば顔色が悪いな」

あまり時間をかけずに終わらせてやろう。との宣言とともに彼はコータスを繰り出し、私はもちろんミロカロスを出す。

「コータス、オーバーヒートじゃ」

「ミロカロス、ハイドロポンプ」

ジムリーダーにたどり着く前にキーのみでハイドロポンプのPPも回復させたし、PP切れの心配もない。

早くこの熱さから逃げ出したい一心で、的確にミロカロスに指示を出していく。

結果、ジム巡りを始めてバトルにかけた時間の自己最短記録を叩き出し、彼からジムバッジを受け取る。

「時間をかけずに倒すはずが、時間をかけずに倒されたな」

流石は新しいチャンピオンの婚約者だと言われ、そういえばジムリーダーにそんな通達があったなと思い出す。

文句を言いたかったが、今は一刻も早くジムから出て休みたいためその旨を伝えると、笑いながら私に近づいた。

「流石にその顔色は心配になるな。ポケモンセンターに部屋を取るから、そこで休んでから行きなさい」

「…!ありがとうございます」

横に控えていたジムスタッフに何かを告げ、私の背中を押してジムを出る。
そのままポケモンセンターに行けば、ジョーイさんが待ってましたと言わんばかりに駆けつけてきた。

「ひどい顔色…!はやく横になりましょうね」

「ジョーイさん、彼女を頼むよ」

「お任せください。付き添っていただいてありがとうございました」

はっはっは。と快活に笑いながら背を向けて去ろうとする彼を呼び止めお礼を言えば、くしゃりと頭を撫でられる。

「子供は大人に甘えなさい。わしら大人は、子供の笑顔1つで頑張れるもんじゃよ」

彼の言葉にジョーイさんも笑顔で頷き、顔が緩む。

「ありがとうございます」

「良い笑顔じゃ。じゃあ、ダイゴにはお前さんが来たことを報告しておくぞ」

元気になったらジムに顔を出せと言い残して彼は去っていき、ジョーイさんに部屋まで案内されてベッドに横になる。

「たぶん、ジムの熱さで急激に汗をかいて脱水症状になったのよ。お水を置いておくから、このピッチャーの中の水が無くなったら、部屋から出ていいわよ。今日は安静に。旅は明日からね」

「…はあい」

返事をしてジョーイさんがいなくなれば、早速とピッチャーを見れば、軽く2Lはあるでろう程の大きさだった。

「…え、これ全部?」

ほぼ1日かかるじゃん。


その後必死に水を飲み続け、飲み過ぎて気分が悪くなればまた寝て、起きたらジョーイさんがサイドテーブルに置いてくれていた雑炊を食べて、また水を飲み続ける。

結局、水を飲み干したのは翌日で、出発しようと準備を始めた時だった。

「水を飲むペースすら管理されてる…?」

計っていたのか偶然なのかはわからないが、ジョーイさんの恐ろしさを感じつつピッチャーとグラスが乗ったトレーをジョーイさんに返却し、1日のお礼を行ってからポケモンセンターを出た。

「あ、そうだ。ジムにも顔を出さないと」

ジムリーダーにお世話になったしなあ。

熱さを覚悟しながらジムに入ったが、まだ開場してないためか、昨日のような熱さほどではなかった。
そのことに胸を撫で下ろせばジムリーダーが現れたため、昨日のお礼を告げた。

「昨日はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。ポケモンセンターの部屋の手配や付き添っていただいて、ありがとうございました」

礼儀正しく、と背筋を伸ばしながら一礼すれば、昨日のようにはっはっはっ。と快活に笑われた。

「なんじゃ、大人のような子供じゃのう」

「親に躾けられてますから」

「あぁ、そういえば良いとこのお嬢さんだったのう。体調は大丈夫なのか」

「おかげさまで。これからトウカシティを目指します」

私の言葉にそうかと頷いた彼は、私に1つの技マシンを差し出した。

「中身はオーバーヒート。相手に大ダメージを与えることができる。まあ、使ってみなされ」

「ありがとうございます」

大事に鞄にしまい、彼と会話を楽しんでからジム出て、トウカシティを目指す。

ゲームでは主人公のお父さんだっけ。
でもあの時はジムリーダーなりたてで、家族をホウエン地方に呼び寄せて、それで主人公の旅がスタートするんだっけ。
じゃあまだジムリーダーじゃないのか。

「…まあまあ、いつものことじゃん。むしろ同じだったのテッセンさんだけだったし」

いやいやと首を横に振り、気を取り直してトウカシティを目指す。

「バッジもらって、ジム巡り後半戦スタートだ」

目指すはポケモンリーグ。

 

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