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「こんにちは!コンテストにご参加ですか?」

「はい」

「部門はどうされますか?」

「うつくしさで。ミロカロスで出場します」

翌日、ポケモンコンテストの会場へ行き出場手続きを行なっている。
受付のお姉さんに何度か質問されながらカトレアにもらったコンテストパスを差し出せば、何故かお姉さんの顔が輝きだす。

「このコンテストパスは…っ!エリシアさん、まさかカトレアさんにスカウトされたという、あの…!?」

「…? はい、たしかに彼女に貰いましたが…」

その瞬間、お姉さんにがしりと両手を掴まれ、"ぜひ頑張ってほしい"と激励をもらった。

「私、カトレアさんの大ファンなんです…!そのカトレアさんがスカウトされたトレーナー…!今日出勤で良かったです!!!」

「そ、そうですか…」

"うつくしさ部門で、ランクはノーマルですね!頑張ってください!"

言葉と共にコンテストパスを返してもらい、受け取ってスタッフの人に連れられて控室まで向かう。

「ミロカロスで出場されるとのことですので、それに適したお部屋でございます」

「ありがとうございます」

スタッフは一礼し去っていったため私も控室へ入れば、なるほどと納得した。

控室にはミロカロスが入っても余裕がある程の大きいプールがあったのだ。
横に鏡台や椅子、試着室などもあった。
コンテストに出場するミロカロスのために購入した、ポケモンの衣装を彼女に着せていく。

「うん、綺麗」

衣装をみにまとったミロカロスは、嬉しそうに私を見て顔を擦り寄せる。
そのまま彼女にポロックをあげていればポケナビに着信が入り、応答すれば相手はカトレアだった。

『エリシア、コンテスト出るんでしょ?衣装は準備してるの?』

「……、衣装?」

なんだそれと思いながらおうむ返しで聞き返せば、数秒の後電話の向こうから叫び声が聞こえた。

『ちょ、エリシア!?ポケモンコンテストだよ!?わかってる!?』

「ミロカロスの衣装は準備してるけど」

『エリシアの衣装だよ!!!』

「…? いや、トレーナーは普通でいいでしょ。アピールするのはミロカロスだよ」

『いやそうなんだけど!!』

ちょっと待ってて!!!と怒鳴って電話を切られ、数分後に控室にカトレアが勢い良く入ってきた。

「どうやって入ってきたの」

「受付のお姉さんが通してくれた!!」

…あのカトレアファンのお姉さんか。

「それより、エリシアも早く着替えて!理由は準備しながら説明するから!」

目の前にカトレアが使っていたのであろう衣装を突きつけられ、渋々着替える。

着替えたら鏡台の前に座らされ、カトレアの手によって髪も顔も華やかになっていく。

テキパキと準備を進めながら、カトレアは説明してくれた。

「いい?たしかにアピールするのはポケモンよ。だけど、そのポケモンを連れているトレーナーに目がいくのも事実なの。どんなに魅力的なポケモンでも、連れているトレーナーがみすぼらしければ、それだけで評価が下がるの」

「……なるほど」

彼女の説明に納得し、少ししょんぼりとする。

「…私は、ミロカロスの評価を下げてしまうところだったんだね」

「そういうこと」

「ありがとう、カトレア。大急ぎで来てくれて」

彼女も仕事や用事があっただろうに、こうして私と私のミロカロスのために来てくれた。
その事実が嬉しくてお礼を言えば、カトレアは照れくさそうにはにかんだ。

「…ま、私がスカウトしたからね!良い成績残してもらわなきゃ」

「うん、頑張るよ。カトレアのためにも」

私たちの後ろで、ミロカロスが微笑ましそうにこちらを眺めていた。




準備も終わり、スタッフが出番だからと呼びに来てくれたためミロカロスをボールに戻せば、カトレアに名前を呼ばれた。

「エリシアならできるよ。頑張って」

「うん。ありがとう、カトレア」

客席で見てるからねー。との言葉を背に控室を出て、前を歩くスタッフに続く。

「…頑張ろうね、ミロカロス」

ボールは応えるように一度揺れた。



* * *

「優勝は、エリシアさんのミロカロスです!」

「良かったね、ミロカロス。ありがとう」

ライトに照らされながら自分の名が呼ばれ、そのまま優勝者のトロフィーと、ミロカロスにはうつくしさ部門ノーマルランク優勝のリボンが贈られた。

その後簡単なインタビューにも答えて控室に戻れば、カトレアに抱きつかれた。

「おめでとう、エリシア、ミロカロス!!凄かったよ!!」

やっぱ私ってば、見る目があるんだねー!!

自分のことのように喜ぶカトレアに、ミロカロスと顔を見合わせて笑い、お礼を言う。

「カトレアのおかげだよ。ありがとう」

私の言葉に続くようにミロカロスも一鳴きすれば、カトレアは照れくさそうに笑う。

「いいって。エリシアとミロカロスが頑張ったからだよ」

今日はお祝いしよ!とのカトレアの宣言通り、いつもの服に着替えた私はミロカロスの衣装を預かり鞄にしまえば、カトレアに手を引かれ外に出て、これまたカトレアのポケモンによってキンセツシティに飛んだ。

「ちょっとカトレア!?」

「また明日シダケタウンまで送るからさ!」

そうだ!ヒナタとスミレも呼ぼう!

言葉と共にポケナビを取り出し、2人に連絡をとり始めたカトレアにため息をつく。

…けど、まあ、嬉しいしいいかな。

そしてこの後、3人とご飯を食べながら衝撃の事実を知る。







「…え、シダケタウンの洞窟の向こうって、カナズミシティに繋がってるの?」

「えー?エリシアってば知らなかったのー?」

「4つ目のジムに挑戦するなら、キンセツシティの上にあるフエンタウンだよ」

「私、てっきりシダケタウンには、コンテストに出るために行ってるのかと思ってたよ」

ヒナタ、スミレ、カトレアに呆れた顔で言われ、なんということだと頭を抱えたがそれも一瞬。

「まあ、コンテストには出ようと思ってたし、ミロカロスで優勝もできたし、寄って良かったよ」

前向きに考えよう、前向きに。

私の言葉に3人は笑った。

「じゃあ、明日はそのまま出発できるね」

「そうだね。ちょうど良かった」

明日はそのままフエンタウンに向かおう。

話がひと段落したところで、カトレアがジュースの入ったグラスを持った。

「じゃあ仕切り直して。エリシアのコンテスト優勝を祝して、かんぱーい!」

「「「かんぱーい!」」」

「ありがとう、3人とも」

旅に出て良かったと、心の底から思えた瞬間だった。


そういえばと受付のお姉さんが感激していたコンテストパスについて尋ねれば、どうやらパスには数種類あるらしい。

「普通の人が渡すコンテストパスは統一のもの。私みたいに芸能関係者やコンテストで有名な人が渡すコンテストパスは、その人限定デザインのものなんだよ」

「へえ…」

ちなみに、ヒナタもスミレも芸能関係者にスカウトされたらしく、普通の人とパスのデザインが違うらしい。

そういうことか。

受付のお姉さんの顔の輝き様を思い出しながらジュースを飲み干した。

 

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