04

「はい、どうぞ。お口に合うといいんですけど…」

毛利探偵事務所へ戻り、料理を教わりたいと言う蘭ちゃんに料理を教えつつ夕飯の準備を進め、毛利家の食卓に夕飯が並んだのは夜の7時半だった。

2人とも食べ始めたのを見て私も料理に手をつけ始め(蘭ちゃんと毛利さんが、一緒に食べればいいと言ってくれた)、普通の味になっていることを確認する。

2人も美味しいと言ってくれて、唐揚げもサラダも完食してくれた。

「こんな美味い飯は久々だなぁ」

「美咲お姉さん、ありがとう!」

「どういたしまして」

料理を教わるのも楽しかったらしい。笑顔で言ってくれた。
私もそれに笑顔で返し、ご飯を食べていると、蘭ちゃんが毛利さんにある提案をした。

「お父さん、美咲お姉さんに料理を教わってもいい?」

「そりゃあ美咲ちゃんが良ければいいが…、急にどうしたんだ」

蘭ちゃんの話によると、私に夕飯を作ってほしいが、毎日頼むのも申し訳ないし、私に予定があったら無理だろうと。
そこで、私が毛利家の夕飯を作りに来るときに蘭ちゃんが私から料理を教われば、外食ばかりしなくてもいいのではないかと。そういうことらしい。

むしろ妃さんが出て行って数年間、どんな食生活を送ってきたんだこの家。
いや、あの人も料理は壊滅的だったけどさ。

蘭ちゃんの話を聞いた毛利さんは、嬉しいような困ったような、複雑な顔をしていた。


「そりゃあ、蘭が料理をしてくれるなら助かるが…。火傷とかしたらどうするんだ」

「そういうのを経験して、人は強くなるの!」


たくましいなこの子。


その後も蘭ちゃんに頼みこまれた毛利さんは、渋々許可を出した。
ただし、慣れるまで料理をするのは、私か毛利さんがいる時のみ。火や包丁を扱うから危険だろうということだ。

毛利さんの約束事に笑顔で頷いた蘭ちゃんは、私に「よろしくお願いします!」と頭を下げた。

「お願いされます。頑張ってお父さんに美味しいご飯作ろうね」

「うん!」

こうして、約半年もの間、ポアロのバイトがある日は必ず毛利さんの夕食を作る日々が始まった。

夕飯の材料費はまとめて毛利さんが出してくれるとのことで、毛利探偵事務所に材料費が入った封筒が置かれることになった。
私がポアロのバイトが終わって事務所に行き、封筒を持ってきた蘭ちゃんにそれを預かり、一緒にスーパーへ行くというルーティングとなっていた。いつのまにか。
だが私の分は引いて、食材費の3分の1は封筒に戻している。きちんとレシート付きだ。

「今日は何が食べたい?」

「今日はねー」


こんな日々も、悪くない。





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