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「美咲さん、家までお送りします。車を回してきますのでもう少しお待ちください」

梓さんと交代して仕事から上がった安室さんは、エプロンを脱いで手短に荷物をまとめると裏口から出て行った。
私は既にいなくなった彼に向けて小さく返事をして、首に手を当てる。

時の流れって早いんだなぁ。

あの人が捕まったことは、昨日のように思い出す。
身体の傷は癒えたが、心もとはいかなかったらしい。

また夜中にフラッシュバックして吐く日々が続くのか。と重いため息を吐き、私も荷物をまとめた。


その後、5分ほどで戻ってきた彼に家まで送ってもらい、更には荷物をまとめるまで家にいてくれて、ホテルの宿泊手続きまでしてくれた。
分厚い封筒をホテルマンに渡した時には、思わず少し視線を遠くに外してしまった。

ホテルの部屋のカードキーを私に渡して、暫くは会社も休めと言われた。

「事情を説明すれば、会社側も休ませざるを得ないだろ」

「…頑張ります」

私クビにならないかな大丈夫かなと心配したが、クビになることと死ぬことを天秤にかけて無理矢理納得させた。休みくれなかったらボイコットしよう。

「外出する時は、一言電話かメールをくれないか」

「わかりました。何から何まですみません」

「気にするな。俺がしたくてしていることだ」

決してストーカーに見つからないようにと念を押し、ゼロさんは帰って行った。
私はエレベーターに乗り、これからどうなるのかと考えてため息を吐く。

そして気づいた。

「毛利さんのとこに駆け込めばよかった…」

事務所のソファでも借りればよかったと後悔したが、さっきまでゼロさんも私も必死だったし、思考が7年前になっていたから仕方ないかと思う。
なにより、毛利さんたちを危険に晒すわけにもいかない。



とりあえずの目標

ストーカーに殺されないこと。





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