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「じゃあまたね、蘭ちゃん」

「気をつけてくださいね?最近物騒なんですから」

「大丈夫だよ。すぐそこだから」

3階の居住スペースから、ポアロの前まで送ってくれた蘭ちゃんに別れを告げ、階段を上がっていったことを確認して歩き出そうとした瞬間、呼び止められた。

「美咲さんじゃないですか。今帰りですか?」

「安室さん。こんばんは」

安室さんの問いかけに頷くと、家まで送っていくと言われ、素直にご厚意に甘える。
近くのパーキングまで歩いたところで、車で来ているのだなと理解した。
原作で知っていたとはいえ、白のRX−7を見て少し笑ってしまった。
交番勤務をしていた時には、まだスポーツカーが似合うような歳でもなかったのにな。

鍵を開錠し、乗っていてくれとこちらに伝えて、自動精算機の方へ歩いて行った。
彼女でもないのに助手席に乗るのは気が引けたけど、この車の構造上、後部座席は人が乗れるスペースじゃないことを知ってるから、渋々助手席に乗った。

「お待たせしました。行きましょうか」

「よろしくお願いします」

家までの道はお教えしますねと伝えれば、彼は頷いた。

車を発進させ、パーキングを出て走ると、彼は適当な道路の端に車をつけた。
なんだなんだと思っていれば、彼は車内を、何かを探すように手をそこかしこに滑らせている。
5分ほど経ち、納得した様子で頷けば、横に座っている私に顔を向けた。

「少し、美咲さんのお時間をいただいてもいいですか?お話したいことがありまして」

「かまいませんよ。明日も休みですし」

私の返事にお礼を言ってどこかへ車を進めた安室さんは、海が見える場所まで来て、ようやく車を停めた。

2人で車を出て、車から2〜30メートル離れて向かい合う。
私のことを見つめた彼は、柔らかく笑った。

「変わらないな、如月」

その言い方も笑顔も、安室透のものではなくゼロさんのもので。
懐かしくて嬉しくて、少しだけ瞳が潤んでしまった。

「そっちこそ。車に盗聴器でもありました?」

それを悟られないように、少しだけ俯いて指で涙を拭う。

私の言葉に、彼は"流石だな"と笑った。

「あれだけ探して無かったから、恐らく無いだろうが…。油断は出来ないからな。お前が狙われたら危険だ」

俺の友人だからな、という言葉で、やっと安心ができた。
心の中で、この人はベルモットじゃないかと疑っていた部分があったから、軽い返ししかできなかったのだ。

この人はゼロさんだと確信ができて、安心して軽く息を吐いた。

「なんだよ」

「いえ。本当に、ゼロさんなんだなって思って」

生きていて安心しました、と言えば、抱きしめられた。
何も言わないが、身体が少し震えていることから、相当の苦労があったのだろう。
ゼロさんの背中に手を伸ばし、落ち着かせるように名前を呼び、背中をゆっくりとさすった。

「大丈夫ですよ。今まで頑張りましたね。これからは、私もいますからね」

大丈夫だと続けると、ゼロさんの腕の力が強くなる
少し苦しくはなったが、今はそっとしておこう。





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