15

年末。

今年はトリップしたり毛利家の夕飯を作ったりストーカー事件があったりゼロさんと仲良くなったりと、慌ただしい半年だった。

クリスマスはポアロのバイトに入り、毛利家の夕飯をご馳走にして、さて帰ろうという時に警官服を身に纏っているゼロさんに会い、家まで送ってくれた。
その際、いつもポアロに長時間いるのと、私に話し相手になってもらっているからとチョコレート菓子をもらった。別に気にしなくていいのに。
後日、ちゃんとお菓子でお返ししました。


12月31日の今日は、みんなどこか浮かれた様子で、楽しそうだなと私も笑顔になる。私は特に予定は無いのだけど。
今日も今日とてポアロのバイトに入っていた私は、閉店作業を済ませてお店を出ると、私服姿のゼロさんがガードレールに座るようにして待っていた。

「どうしたんですか」

驚いて駆け寄り、外に出たら身につけようと思っていたマフラーをゼロさんの首に巻く。
マフラーを巻かれたゼロさんは、私に初詣に行こうと提案してきた。
詳しく話を聞くと、今日で交番勤務が最後で、来月から正式に部署に配属されることになったから、今までみたいに会えなくなる。だから初詣に行こう。とのことだった。

「"交番勤務の良い思い出が欲しかった"って言えばいいじゃないですか」

「いいから。行くのか?」

少し恥ずかしそうにこちらを睨むゼロさんに笑い、もちろんと頷く。

「ご一緒します」

「ん」

こくりと頷き、行くぞと先を歩く。
手を繋ぐことはないけれど、隣を歩くだけで私は幸せだ。
コナンの中で1番好きなキャラが隣にいるなんて、未だに信じられないが、それでも私はここにるいる。
ゼロさんも、きちんとした意思を持ってここにいる。
人生、楽しみを見つけようと思えばできるんだな。


近くの神社まで歩き、私のお腹が空いていたこともあって、屋台で食べ物を買う。

「太るぞ」

「今日は特別ですー」

唐揚げが棒に4つ刺さっている唐揚げ棒を買い、1つ食べてゼロさんに唐揚げ棒を差し出す。

「おひとついかがです?美味しいですよ」

「……もらう」

言うなり、棒を持っている私の手を掴み、もう片方の手はマフラーを首まで下げて、唐揚げを1つ丸ごと口に入れた。

「意外と男らしい食べ方をするんですね。熱くないですか」

揚げたてをもらったから少し心配になって言えば、相当熱かったのだろう。口を押さえて涙目で食べていた。可愛すぎか。

「…口の中火傷した」

「冷たいもの買ってください」

まだ22時ごろだから手を繋がなくても逸れないだろうが、これからのことを考えると無理だろうなぁ。でも手を繋ぐのはなんとなくちょっとなぁ。

と考えた結果、食べ終わった唐揚げ棒の棒をお店の前のゴミ袋に捨て、持っていたおしぼりで口と手をしっかり拭き、先に歩き出したゼロさんの上着の裾を掴んだ。
掴まれたことに驚いたらしいゼロさんは、目を見開いて私を見た。

「逸れたら面倒ですから。我慢してください」

「……服、伸ばすなよ」

「それは周りに言ってください」

そう言えば、なんとなく何か言いたげな雰囲気を感じ取ったが、特に何かを言うこともなく、ゼロさんはお参りの列に並んだ。
まだ少し時間が早かったこともあり、30分ほどでお参りは終了し、配られていた甘酒を飲んで帰路につく。

「来年から忙しくなりますね」

「あぁ。少し気が滅入るが、楽しみでもある」

そう言ったゼロさんは、本当に楽しみのようで、少し口角が上がっていた。
そんな彼を見て、私もつられて笑顔になる。

「頑張ってとは言いませんから、ダメになりそうなときはポアロに来てくださいね」

就職するまでは、あそこを辞めませんからと言えば、頷いてくれた。

結局家まで送ってくれたゼロさんは、戸締りをしっかりするよう言い、暗闇に消えて行った。
言いつけ通り、鍵とチェーンをしっかりとかけ、お風呂に入って床につく。

これからゼロさんと会う機会が減るのは少し寂しいが、まぁ何年かすればポアロでまた会えるし、いいか。と前向きに考える。

「……あ、そのときはゼロさんじゃなくて、安室さんか」

それもなんか寂しいな。





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