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あれからも、ゼロさんは私に会う頻度を低めることもなく、暇があればポアロに来ていた。

「暇なんですか」

「そんなわけないだろ」

この教材を見ろと言われ、家でやれよと思う。
ゼロさんは最近、前よりも勉強家になった。
前まではポアロに来ても本を読むばかりで勉強する素振りも見せなかったが、先日のゼロさんの質問に答えてから、ここで勉強もするようになった。
いやいいんだけどさ、話し相手がいて時間も潰れるから。

今日はポアロにいても、夜ご飯は一緒に食べれないんだけどなと思っていれば、勢いよく扉が開かれ、ランドセルを背負った蘭ちゃんが現れた。

「美咲お姉さん!ただいま!」

蘭ちゃんはたたたっとカウンターの出入り口まで来て、私が近付くと腰に抱きついて来た。天使か。

「おかえり、蘭ちゃん。学校は楽しかった?」

「うん!さっきまで新一も一緒だったよ」

「素敵なボディガードだね。誰かに狙われても安心だ」

いや、今はまだ博士の発明品が無いから安心じゃないか。

「美咲お姉さん、今日はオムライスが食べたい!あと白いスープも!」

「りょーかい。たしか冷蔵庫にある材料じゃ足りないよね?一緒に買い物行こうか」

「うん!待ってるね!」

「それまでに宿題終わらせておくこと。わかった?」

「はーい!」

言いながら笑顔でお店の外へ出て行き、ガラスの向こうから手を振りながら2階に上がっていった。
まるで嵐のような蘭ちゃんに、店内の常連さんは微笑ましそうに私を見て、何気に初めて見るゼロさんは驚いたように私を見た。

「子供いたのか」

「いませんよ。2階の毛利探偵のお子さんです」

奥さんが家を出てから外食ばかりだったから、蘭ちゃんが可哀想で私が夕飯を作るついでに料理を教えているのだと言えば、ゼロさんは納得した。

「俺も、誰かの飯を食いたいもんだな」

「恋人に作ってもらってください」

「今は恋愛よりも仕事」

「むしろこの先も、仕事が恋人の状態が続きそうですね」

ほどほどにしてくださいねと言えば、どうだろうなと返される。
今の距離感が、なんだか居心地が良かった。


ちなみに蘭ちゃんは私の言った通りに宿題を終わらせていたから、ご褒美にスーパーでお菓子を1つ買ってあげた。





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