13

季節は、冬にさしかかろうとしていた。


ストーカー事件があってから、ちょくちょくゼロさんと話す機会が増えた。
休みの日にご飯に連れて行かれたり、ゼロさんがポアロに遊びに来たり。
この人私しか友達いないのかな、と疑うレベルで月に数回会う。

今日も、ゼロさんはポアロに遊びに来ていた。
遊びに、というより、私と話をしに来ていた。

「ゼロさん」

「なんだ」

「私しか友達いないんですか?」

こうも会う頻度が高いと心配になりますよと言えば、阿保かと言われた。

「この俺だぞ。友人ぐらい、いるに決まってるだろ」

ただ休みが合わないだけだと言われ、なるほどと納得する。
ていうか、"この俺"ってなんですか。"この俺"って。
安心しましたと伝えればジト目で見られたが、スルーしてゼロさんの空いたグラスにコーヒーのおかわりを注いだ。

今日は特に暇な昼下がりだ。
お店の前の道も人通りがいつもより少なく、これではいつもの売上はとれないだろうなと推測する。まぁ、私的には暇な方が楽だから喜べるのだけど。

「今日は特に暇ですねー」

「その分、俺と話が出来て嬉しいだろ」

「そーですねー」

「棒読みだぞ」

「ゼロさんが面白いこと言うからじゃないですか」

あははと笑えば、ゼロさんは少し考えたように真顔になって本に目を落とし、少しするとおもむろに本を閉じて私を見た。

「如月」

「なんですか」

「俺が公安になったら、どうする」

「どうするって…」

何を言っているのだろうと内心思う。
なったらも何も、公安になるんですが。とは言えなかったから、心の中だけにしまっておく。
真剣な、けれども少しだけ不安そうな顔で問いかけられ、私はそれに少し可笑しくなって笑いながら答えた。

「どうするも何も、変わりませんよ。ゼロさんが公安になってもならなくても、ゼロさんはゼロさんですから。警察の降谷零も頼りになりますけど、私は普通の降谷零として、ゼロさんと仲良くなりたいんです」

っていう回答じゃだめですかね。と言うと、ゼロさんは驚いた様に目を見開いた後に、柔らかく笑った。イケメンだ。

「いや、良い回答だったよ。俺的にはな」

「なら良かったです」

ゼロさんが納得のいく回答で良かった。
けどそうか。公安になると潜入捜査もあるから、少し不安もあったんだろうな。

「ゼロさん」

「なんだ」

「何を不安に思っているのかわかりませんが、大丈夫だと思いますよ、ゼロさんなら。愛国心は人一倍強そうですし、芯はしっかりしてそうですから」

心が折れそうになったり、自分がわからなくなりそうな時は、いつでも話を聞くので呼んでください。と言えば、先程と同じ様に目を見開いた後に、笑った。

「頼もしいな」

「私は誰でもない、降谷零の友人ですから」

頼もしくないと。と笑って言えば、ありがとうと返ってきた。
うん、ゼロさんが来た時よりは顔が明るくなった…かな?





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