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ストーカー事件から数日。

警察からの事情聴取も終わり、病院の精密検査も異常無しと診断され、喉に違和感があることと痣が残っている以外は特に日常に支障は無くなってきた頃に、手土産を持って交番へとやって来た。

主に降谷さんへの感謝の印だが、ストーカーを逮捕してくれたり本部へ連絡したり病院へ連絡してくれたりと、他の警官たちにもお世話になったため、ちゃんとした手土産(お菓子)を持って来た。

私が行った時にちょうどパトロールから帰って来たらしく、降谷さんともう1人の警官がパトカーから降りて来た。

「こんにちは」

2人に挨拶をすると、もう1人の警官も私のことを覚えていたらしく、体調はどうだと聞かれた。

「喉に違和感があるのと痣がある程度で、日常生活を送るには支障がないです。あの時はありがとうございました」

簡単なものですが、お召し上がりくださいと紙袋を渡せば、体調が悪くないなら良かった。ありがたくいただきます。と素直に受け取ってくれた。
もう1人の警官は降谷さんに一言二言伝え、交番に戻って行く。
残った降谷さんは、改めて私に大丈夫かと尋ねてきた。

「大丈夫です。さっきも伝えましたが、喉の違和感と痣だけで、あとは何もないので」

「…本当なんだな?」

目をまっすぐに見られ、息が詰まった。
気まずくなって彼から顔をそらし、小さく答える。

「…時々、夜にあの時のことがフラッシュバックして、気持ち悪くなるだけです」

あの事件の次の日から、首を絞められているときの光景が蘇ってきて、首が苦しくなるのだ。
おさまってきたらトイレに吐きに行く、というのをほぼ毎日のように味わっている。果てしなくきつい。心身ともに。

私の言葉に、彼は眉間に皺を寄せる。

「"だけ"っていうことじゃないだろ。心と身体のためにも、心療内科へ通院するべきだ」

「そこまでじゃないですよ。大丈夫です」

そこまで言って、そういえばとあからさまに話題を変えた。
これ以上突っ込まれても、ちょっと困る。

「降谷さんの下の名前、なんて読むんですか?」

携帯に登録されている名前を出して見せれば、「れい」とだけ返ってきた。はい知ってます。

「珍しい名前ですね。ゼロさんかと思いました」

「昔、そういうあだ名で呼ばれてたことはある」

「じゃあゼロさんですね」

「じゃあの意味がわからん」

別にいいが。と苦笑されたが、私はゼロさん呼びを許してくれたことに驚きを隠せなかった。
とりあえず、降谷さんにも改めてお礼を伝えた。

「先日はありがとうございました。ゼロさんのおかげで、まだ生きられそうです」

「いや、あのタイミングで如月が電話してくれたおかげだ。少し遅れたが、間に合って良かった」

これからは気をつけろよ。と頭を撫でられ、素直に頷く。

原作の降谷さんって、こんなに人に触れる人だっけ。
まだちゃんとした公安じゃないから、他人との距離が近いのかな。
なんてことを考えつつ、降谷さん、もといゼロさんと別れた。

「あー…。あと7年か」

先は長い。
とりあえず今は、蘭ちゃんの料理スキルを上げることと、心身ともに休ませることをメインとするか。





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