05
ジュードくんと夕食を食べたら、エリンさんが迎えに来たり、そのまま私の家に泊まったり。
どうやら、今日は泊まっていくようだ。
「おやすみ、ジュードくん」
「おやすみ、エリシア」
私がお風呂から上がると、ちょうど部屋に行こうとしたのか、2階へ続く階段に足をかけたジュードくんが、こちらを振り向いたから挨拶を交わした。
昔はよく一緒に寝ていたけれど、思春期に入りかけのジュードくんは、もう1人で寝たいらしい。
彼が2階へ行くのを確認すると、母さんとリビングで向かい合って話す。
「そういえば、学校のことなんだけど」
「ジュードくんが心配だから、ル・ロンドの学校にするの?」
あんた、ジュードくん大好きだものね。
母さんに笑いながら言われるが、本当のことなので否定はせずに苦笑する。
いま通っている学校は、12歳で卒業となる。
クラスの子たちは、地元であるル・ロンドの学校へと進学したり、他の街の学校へ進学したりとまちまちだ。
そして私は、去年からどこの学校へ進学するか悩んでいた。
ル・ロンドに残ってジュードくんとレイアを見守るか、それとも他の街へ行くか。
迷ったけど、私は、
「…母さん。私、イル・ファンの学校に行って、歴史と精霊術について学びたい」
「行ってらっしゃい」
行くからには諦めるんじゃないわよ。
反対されるかもと内心びくついていたが、どうやらそれは杞憂だったらしい。
母親の慈愛の満ちた優しい笑顔で言われ、何故だか泣きたくなった。
「ジュードくんやレイアちゃん、友達には言うんでしょ?」
「うーん…。まぁ、そのうち言うよ」
「適当ねぇ。誰に似たのかしら」
母さんが呆れたように笑いながらため息をついた。
"この性格は母さんだよ"とは、口が裂けても言えそうになかった。
ちなみに、父さんも、"エリシアは母さんに似てるなぁ"って言ってたよ。
こうして私は、ル・ロンドの学校を卒業後、イル・ファンのシュルツ総合学校に進学した。
シュルツ総合学校は、私の学びたい歴史や精霊術の他に、文学や化学など、様々な分野が学べる、リーゼ・マクシアでも有名な学校だ。
イル・ファンは夜域のため、朝から夜まで1日中夜のままだ。
体内時計がおかしくなってくる。
「頑張らなくちゃ」
すべては、あの子たちの未来のために。
そして私は結局、ジュードくんやレイアには何も言わずにル・ロンドを去ったのだった。
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