10
「ジュード君」
改まってジュード君の名を呼べば、彼は不思議そうに首を傾げた。
「なに?」
「しっかり勉強するんだよ。無駄なことなんて何もない」
「…うん」
「いじめられたらすぐに逃げていいし、私に言って。私はジュード君を見捨てないし、迷惑にも思わない」
「エリシア…」
嬉しそうに微笑むジュード君に、「でも、」と続けて彼の瞳を見る。
「それ以外のことで逃げたらだめだよ。逃げたら、もう向き合えなくなる。気づいてからじゃ遅いんだ」
学校は違うけど、人生の先輩からのアドバイスだと笑えばジュード君も笑って、しっかりと頷いた。
「ありがとう、エリシア。すごく嬉しいよ」
「うん。頑張ってね。いつでも頼っていいからね」
これから彼は、私のところに来る暇もなく、授業やレポートに明け暮れるだろう。
それも少し寂しいが、今まで4年間も顔を合わせていなかったのを考えると、幾分かマシだった。
私がジュード君の家に行って、ご飯作ってもいいしね。
「ごちそうさま。美味しかったよ」
「お粗末様です」
ジュード君が作ってくれたご飯を食べ終えたら、私は引き続き論文の続きを書き始める。
食器は、ジュード君が洗ってくれていた。
「エリシア」
「んー?」
「明日は何時に起きるの?」
「6時半かなー」
「わかった。じゃあ、僕は戻るね」
「うん、おやすみ。ご飯ありがとうね」
部屋を出ていくジュード君に手を振り、気を取り直して作業を開始する。
「これが終われば、明日は授業だけだし…。ジュード君とゆっくり話そうかな」
願わくば、あの子たちの幸せを。
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