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捧げ物
黒鵺×妖狐蔵馬
馴れ初め捏造



痛い。痛い。痛い痛い痛い痛い痛い。悔しい。寒い。腹が減った。俺ともあろう妖怪が、妖狐ともあろう気高い妖怪が、罠に掛かったというのが悔しい。痛い。寒い、許せない。鬱蒼としげる魔界の森、かれこれ長いこと独りで生きてきた。この経験は必要ないし、屈辱的だ。弱り疲れはて既に薄汚れたボロ狐と大差ない姿を晒す羽目になろうとは俺も、妖狐蔵馬も落ちたものだと呑気に考えるのもいいがこの状況をいかに打破するかなど、到底思い浮かぶことはない。因みに罠に掛かったこの左足、感覚がなく血が既に黒く固まり始めている程度。ああ、こんな所で出血死なら未だしも、衰弱死、或いは底辺の底辺に飢え死にか。こんな生涯の終え方など俺のお高いプライドが許す訳もなく罠を外そうと抵抗したものの、案の定外れない。最初の内は苛つきが募り周りの木の枝や小石、仕舞いには土にさえ当たった。惨めだ。それは今の俺にピッタリな言葉だ。泥にまみれ土に当たり衰弱或いは、飢えで死ぬなど腹立たしい。ああ、腹立たしい。土に当たる内に恥ずかしい行為に思えてきて、我に返った。

何かがいる。今、この状況でその何かに襲われたら完璧に終わりだ。この状況も終わりに近いが、99.9%が終わりに近いが、残りはまだ望みがある。どうする、どうする、働け頭、どうする、どうしようもない状況でどうしようもないではないか。我が身可愛さに助けを乞うか。だが相手が話の通じない相手だったとしたら?俺を恨んでいる相手だったとしたら?糞、血の臭いで相手が反応しているのは丸解りだ。逃げられない、ならばこの状況を享受するしか、「ほーう、狐さんがこんな所で呑気にお昼寝か?」どうやら答はトリプルAの馬鹿が来たようだ。助けを乞うのも惜しいような相手だとは思わなんだ。
「そちらは名高き鵺殿とお見受けするが、こんな所でお散歩か。」
ああ、どうにでもなれ。
「ははは、愉快だなその台詞に反するその状況。」
「それは良かった。去ね。」
「つれないなあ・・・助けて差し上げようか?」
「・・・貴様の様な汚い妖怪などに助けて等。」「言葉に迷いがあったぞ狐さん?」
「・・・。」
「よーし、助けてやろう。ただし、俺に1つだけくれ。」
「・・・何を。」

それから鵺は黙って罠を外す。固まった血が邪魔をして、痛みを堪える俺の表情が邪魔をして手間取る。どうやら骨が折れているようだ、道理で。やっとで外した罠は憎くて憎くて仕方がなったが、後から思えばそうでもない、かもな。鵺は得意気な顔をして自らの名前を【黒鵺】と名乗った。俺は心底どうでも良かったが、覚えてやらん事もないと答えてやった。
「おい、くれと言ったが何が欲しい。俺の骸でも欲しいのか。」
「へえ、言うねえ。残念ながらそんなものはいらねえよ、欲しいものは只1つ、」




そう、君は綺麗な碧色をした友達だった







すけしゃんに捧げる!
誕生日おめでとう!
H23.3.17.
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