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 愛されたいと思ったことはない筈だった。それこそ他人の云う恋愛とかは、僕には難しすぎて理解できない。しようとは思う。

 愛には種類があって、僕は友達を勿論愛しているけれど、友達同士がセックスするか、なんて質問は難しすぎる。巷にはセックスフレンド成る枠があるらしいけれど、トウヤは「性欲処理だよ。そういうのってやっぱ避妊しなきゃだよね。」って言っていた。トウヤはよくわからない。トウヤに限らす、よくわからない。そこには愛はないと云うのに、愛に結びつく行為をして、なにも産まれやしない、むしろ産まれたら困るだなんて!愛の一方通行は理解できでもこればっかりは、わかりやしない。トウヤにそう伝えたら「不能かよ。」って言われた。よく、わからない。

 キスをしたことはある。友達のチラーミィが可愛くて思わずキスをした。チラーミィは嬉しそうで僕も嬉しくなった。その話をベルにしたらニコニコしながら「わたしもポケモンにキスしたことはあるよ。でも、それって友達が可愛ければ誰でもキスしちゃうってことだよね?」って。そう言われて何か違う気がした。トウヤもベルもチェレンも、勿論トウコも皆友達で、可愛い。でもキスをするってなんか違うかもしれない。どうしてだろう。皆同じ友達で、可愛くて、大切で、好きで、愛しているのに。そこに生じる恥ずかしさとか、緊張とかを上手く説明できそうにない。よく、わからない。

 抱きしめることは多かったけれど、果たして僕は誰かに抱きしめてもらったことはあるのだろうか。チェレンに誰かを抱きしめたことはある?と聞いたら、顔を真っ赤にして「な、ないよ。」って言っていた。本当か定かじゃないが、そうらしい。前にトウコがチェレンはツンデレだからねって言っていたのを思い出して、隠さなくてもいいのにって口からポロっと出てしまった。チェレンは相変わらず赤い顔で「君だからこその勘違いしているようだけど、僕は人を抱きしめたことはないけれど、ポケモンはあるからね。」ってなんだ、あるじゃん。どうして嘘を吐いたのか、よく、わからない。

 トウコに最近思ったよくわからないことを相談してみた。そうしたら、「Nは恋をしたことはある?」と聞かれた。言葉とか、概念はわかるけど、どうなれば恋だとか、どうだと愛だとかの境界がわからない。したことないんじゃないかな?よくわからないし。って言って、返ってきたトウコのくれた答えに耳を傾けた。

 「恋は大切にしたいって気持ちとむちゃくちゃにしてしまいたいって気持ちが宙ぶらりんになったものだよ。」
 「むちゃくちゃに?酷いことをするの?愛しているのに。」
 「そう。友達って大切にしたいだけで、まさかむちゃくちゃにしたくなんてないでしょう?」
 「勿論。だって大切だもの。恋の相手は大切なのに酷くするの?」
 「うん。きっとNが思ってるほどの酷くじゃないけれど、意地悪したくなったり、そのくらいのものなんだけれど、そうすればどんな意味であっても、気持ちはこっちに向いている訳だから。でも勿論大切だから、そうしたくない気持ちもあって、その葛藤もあるんじゃないかな。」
 「よく、わからないね。」
 「わたしもよくわからないよ。言葉にするのって難しいじゃない?気持ちって。言葉にしなきゃ伝わらないくせに、むかつく。」
 「ねえトウコ、僕ね。ゲーチスを少し恨んでいるんだ。どうして、とかは話が脱線するから今は言わないけれど、少し憎いんだ。でもね、その反面、大切なんだ。どうしてかは、あれだけど…。ねえ、トウコ。これって恋かな?」
 「違う。」
 「えっでも。」
 「違う。」
 「よ、よくわからないね。」


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