自由なサッカーを手に入れてから、吹雪先輩は少し変わった。元々の穏やかさはそのままに、肩の力が抜けたようにさらっと冗談を言ったり、何だか砕けた雰囲気になった。たくさん笑うようにもなった。きっとこれが本来の吹雪先輩なんだろう。楽しいサッカーをする吹雪先輩は、風のように自由な人だった。

白恋のコーチに就くまでプロだった吹雪先輩は、当時稼いだお金で「遠征」と称して月に一度、雷門との練習試合に連れて行ってくれるようになった。グッズ販売が当たって、普通のプロ選手より入ってくるお金が多かったというのが吹雪先輩らしい。母校の名前と似ている商品が人気のお菓子メーカーが販売した、「士郎が恋人」というクッキーは即日完売だったとか何とか。パッケージが僕の写真だっただけでたくさん買う人もいるんだからおかしいよね、と吹雪先輩は本当に不思議そうな顔をしていた。

遠征の日は、毎月とても楽しみだった。
雷門とサッカーできるのは勿論、憧れの女の人にも会えるからだ。音無先生は可愛くてきれいな大人の女性だ。赤い頬が可愛い女の子は向こうにも時々いたけど、こういう都会的な女の人は俺の周りにはあまりいない。時々笑いかけてもらうと、すごくドキドキした。


「雪村って、春奈さんみたいな人がタイプなの?」

休憩時間に雷門と白恋両方の世話を何くれと焼く音無先生を眺めていたら、吹雪先輩が声をかけてきた。何となく恥ずかしくて、そんなんじゃないです、と音無先生から目を逸らして答えた。そうなの?と吹雪先輩が楽しそうに笑う。

「そっか。じゃあ僕のお嫁さんにスカウトしようかなぁ」
「……駄目です」
「どうして?ひらひらのエプロンで、お風呂にする、ご飯にする、それともわたし?ってされたらきっと可愛いんだろうなぁ」
「吹雪先輩のおじさん」
「おじさん?」
「どう考えてもおじさんじゃないですか」
「おじさんかぁ、酷いなぁ」

思わずその発想に突っ込むと、吹雪先輩がねぇ春奈さん、と俺の方を見ながら微笑んだ。慌てて振り返ると、後ろに音無先生が立っていた。


「吹雪さんがおじさんってことは……なんかショックですね」
「大丈夫だよ。僕はいつでも春奈さんを可愛い女の子って思ってるから」
「うわぁぁ、違うんです!」
「ふぅん。雪村、何が違うの?」
「音無先生は可愛くて素敵で大好きです!」

口に出してから、しまった、と気付いた。音無先生は目を丸くした上に口を開けていて、吹雪先輩はそっか、大好きなんだ、としれっと言う。

顔が熱くて今すぐここから走って逃げたいのに、体が固まって動けない。あぁもう吹雪先輩の馬鹿!




※その後の春奈ちゃんと吹雪くん


「雪村くんって可愛いですね。吹雪さん、いつもあんな可愛い子独り占めしてるなんてずるいですよ」
「うん、可愛いよ。ねぇ春奈さん、僕と付き合えば雪村も付いてくるけどどうかな?」
「……それはちょっと魅力的な話ですけど、そんなこと勝手に言っていいんですか?」








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