※不動さん×春奈先生×鬼道さん+佐久間さん



バタバタと騒がしい音で目が覚めた。カーテンの隙間から入る朝日が眩しい。そろそろいつものようにマネージャーの誰かがご丁寧に部屋まで起こしに来る。この音は多分鬼道くんの妹ちゃんなのでどうせ有無を言わせず布団を剥がされるんだろうと思い、頭まで布団を被った。

「お兄ちゃん!」
「……人違いだけど」

予想通りバッと布団を捲った音無は寝ぼけていたのか大ボケをかました。なるべく鬱陶しそうに目を開く。声と言動から間違いなく妹ちゃんだと確信していたが、布団を抱えながらしまった、と目を見開いていたのはどう見ても知らないハタチくらいの大人の女だった。えーと、誰?

「えっと、すみません人違いでした!」
「……あ、そう、って誰とだよ?」

思わず怪しい女の腕を掴んだ。人違いなのはお互い様だが、合宿所に入り込む謎の女が何者なのかは多少興味があった。
「お兄ちゃん」、年から考えるとカントクくらいしか当てはまりそうな人物はいないが、妹がいるなんて話は聞いたことがない。だいたい、どう見ても全然似ていない。
むしろ髪や瞳の色、小作りだが整った顔立ち、そそっかしいところといい、極めつけの頭の上の眼鏡は音無によく似ている。だが、音無の血縁者は鬼道くんだけだ。鬼道くんはこの女に「お兄ちゃん」などと呼ばれる年じゃない。

「……で、アンタ誰。泥棒?」
「違います!えーと、わたしのことは気にしなくていいですから。だから不動さん手を離してくれませんか?」
「……何で俺の名前知ってんの?」
「あっ」

怪しいことこの上ない女を、もう見逃す訳にはいかなかった。一体何者だ?えーと、あの、とこの後に及んで言い訳を探すので腕を引いてベッドに引き摺り込んだ。早く言わないとまずいと思うけど?ベッドの上で両腕を押さえ付けてわざとにやにや笑ってみると、やっとのことで女は口を開いた。

「わたしです!不動さん!」
「わたしって誰だよ?俺俺詐欺かよ」
「音無です、おとなしはるな!」
「……音無」

じたばた暴れる女は確かに音無に似ている。だが、妹ちゃんは俺より年下でどう考えても一晩寝てこうも成長はしないだろう。

「……俺、鬼道くんの妹の音無春奈しかそういう名前の知り合いいねぇんだけど」
「だから、わたしはお兄ちゃんの妹です!」
「……は?」

涙目で訴えるので、とりあえず眉唾物だとは思ったが腕を離して話を聞いてやることにした。
ベッドの縁に腰掛けた大人の音無春奈によると、朝目が覚めると十年後の未来からこっちに来ていたという。寝る前に十年前のことを考えていたからじゃないか、と大人の音無春奈は言うが、それで過去に来れるなんてどんなSFだ。その仕組みだとか、俺の知っている音無春奈はどうなっただとか、謎なことだらけだ。
で、大人の音無春奈の頼るべきはいつまで経っても鬼道くんで、とりあえず鬼道くんの部屋に行こうとして、間違えた。あー、そこで間違えるところはこの女=音無だと思ってもいい要素かもしれない。

「まー多少無茶苦茶だけど嘘じゃなさそうだな」
「信じてくれるんですか?嬉しいです不動さん!」

隣で話を聞いてそう言うと、がばっと勢いよく抱きつかれた。やっぱこの無防備さは妹ちゃんで間違いない感じだ。それはともかく育った胸顔に当たってっから音無さん。ちょっとマジ誰でもいいから助けて。


「不動、春奈が来てないか?朝から姿が見えないんだ……が!?」
「まさかお前春奈ちゃんに変なことして……な!?」

バタンと開いたドアの先で鬼道くんと佐久間が呆然としている。そりゃ部屋開けていきなりそこの奴が知らない大人の女にぎゅっとされていたら誰だってそういう反応をするだろう。いや、一応この女お前らが探してる奴だから!ってその視線!お前ら目ぇ隠しててもわかんだけど?

「「邪魔したな」」
「いやいや、おい!」

反射的に待て、と引き止めた。すると、ドアを閉めようとした鬼道くんに向かって、大人の音無春奈が俺の体を離して駆け寄って行った。

「お兄ちゃん!」
「……!?」

鬼道くんは突然大人の音無春奈に半泣きで抱きつかれて明らかに動揺していて、佐久間が口を開けている。自分がされると全く余裕がないもんだが、人がされてるのを見るのは案外面白いかもしれない。

「わたしのこと忘れちゃったの?」
「……こいつ、鬼道くん探してたんだと。泣かせてないでさっさと認知してやれよ?」
「「!?」」

鬼道くんは実の妹に抱きつかれて顔を真っ赤にさせていて、佐久間は逆に真っ青な顔をしている。早く妹ちゃんってわかってやれって言っただけだっつーの、なーに考えてんだか。








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