突然だが。

俺には非常に気に食わない奴が居る。







半径50cmの恋物語





そいつは同じ学校で、同じ学年で、同じクラスで、しかも俺の後ろの席だったりする。そんな嫌いな奴と一週間の内の五日間も半径50cmもの距離に居られると思うとストレスで胃がキリキリして仕様がない。

しかもだ!
俺がそいつのことを毛嫌いしている事と、猿渡祐樹(さわたり ゆうき)と犬飼良牙(いぬかい りょうが)なんて名前なものだから、俺たちは「犬猿の仲」なんて非常に不愉快な呼び方をされている。
犬猿の仲、所謂「何かにつけていがみ合うような仲の悪さ」、という意味なのだが、犬飼が大嫌いな俺からしてみれば、〜の仲などと一括りにされること自体が俺からしてみれば腹立たしい。

だからこそ!
俺は今日も負けじと手を上げて担任に物申す!


「先生!」

「おっ!どうした猿渡?今日もか?」

「はい、席替えしたいです!いつになったら席替えしてくれるんですか?!」

もう二学期も始まり、今では九月中旬。
四月の上旬にくじ引きで決めたこの悪夢の席順から早く開放されたい。出来れば犬飼から遠く離れた席がいい。もっと細かく言うならば、俺が左端の後ろの席で、犬飼の糞野郎が右端の一番前という席順が理想的だ。どんなに我侭を言おうと今すぐクラス替えまでは出来ないのだから。出来るだけより遠くへ。


「猿渡、まだ犬飼のこと毛嫌いしてるのかよ?」

「当たり前だろ?むかつくんだよ、こいつ!」


親友から掛けられた言葉に、なるべく視界に入れないように後ろに座っている犬飼を指でさす。そうすれば犬飼ファンがそれを心地良く思うわけがなく、ブーブーと文句を言ってくる。


「猿!あんたねー、何様のつもり?!」

「そうよ、そうよ。犬飼君が言うならともかく、何であんたがそんな口を叩く訳?!」

「早く謝りなさいよ!」

「……っ、」

この強烈で辛辣な物言い。
やはり女子からの罵詈雑言には堪えるものがある。

くそーっ。余計にむかついてきたぜ。犬飼良牙という人物がよー。無駄にイケ面な所も。成績、運動神経共に学年一位な所も。何を言ってもピクリとも表情を変えない、女子からクールだともてはやされている性格も。何もかも!


「……」


一方俺はというと…、犬飼とは全くの真逆。
フツ面どころか、ブサ面に限りなく近いかもしれない。その上、体力テストも学年考査も下から数えた方が遥かに早い。性格だって自分で言うのもあれだが確実に悪い。何しろ俺は犬飼の所為で女子から「邪魔で煩い猿」と言われているのだから…。





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