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だが無視だ。全部無視。
犬飼の野郎が俺に何かを訴えてきていようが関係ない。どうせ席替えも、もうすぐあるだろう。そのときまでの辛抱だ。そうすればこの気味の悪い視線からも逃れられるはずだ。

そしたらこれからは犬飼のことなんかは気にもならないだろう。


「猿渡」

そう思い始めた矢先のことだ。
後ろの席の犬飼に声を掛けられた。久しぶりに名前を呼ばれ、訳も分からず身体が強張ってしまう。


「……」

これは返事をした方がいいのだろうか…?
…いや、無視だ。それが俺が出来る一番適切な反応だろう。そうすれば犬飼の奴も諦めてくれるはず。


「猿渡」

「……」

「…猿渡」

「……、」


だがしかし、いくら無視しようとも、犬飼は俺に声を掛けてくる。


「…何だよ?」

これにはおもわず、途中で俺が折れてしまった。だが決して振り返ってはやらない。こいつとは背中越しでの会話で十分だろう。


「今日の放課後大事な話がある」

「……無理」

そして意外にも犬飼からの話の内容は、今日の放課後の呼び出しだった。


…何で、いきなり?

だが今日は大事な用がある。だから俺は高木のときと同様、断った。まぁ、犬飼の場合は用がなく暇でも断るつもりだけど。


「大事な話なんだ」

「……」

「猿渡」

しかし犬飼は中々折れてくれない。
こいつに諦めるという文字はないのだろうか。


「俺は他に大事な用があるから、無理」

「それが終わった後でいい」

「……、分かったよ」

もうそこまで言われてしまったら断れない。俺は犬飼の用とやらに渋々承諾をした。もうこの際だ。その時に、もう俺のことを見るな、構うなと言ってやろう。

それでもう終わりだ。
俺も犬飼のこと悪く言うのも止めてやるよ。


全く無関係の状態になろうじゃねぇか。




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